安倍晋三首相はきのう、内閣改造に踏み切った。手堅さを重んじて、実力派の閣僚経験者を要所要所に配置した守りの布陣と言えよう。
 身から出たさびとはいえ、度重なる閣僚の不手際や失言で政権の土台を揺さぶられてきただけに、「耐震強化」を優先したのは間違いない。
 「人心一新」の看板も掲げたものの、初入閣は6人、女性閣僚は2人にとどまる。国民の目には「重厚長大」に映ったのではないか。一歩間違えれば、「飽き」につながりかねない。賭けであろう。
 麻生太郎副総理兼財務相、世耕弘成経済産業相、菅義偉官房長官ら重要閣僚を留任させ、骨格は維持した。
 一方で「お友達優遇」批判にも配慮。政権と距離を置いてきた反主流派の野田聖子氏を総務相として内閣に取り込み、挙党態勢を演出した。
 安定感と政策の継続性を重視したのだろうが、その分、新鮮さに欠けた印象は否めない。裏を返せば、自民党の人材難が露呈した格好だ。
 焦点だったのは、稲田朋美氏が辞任した防衛相のポスト。南スーダンの国連平和維持活動(PKO)に派遣された陸上自衛隊の日報隠蔽(いんぺい)問題の収束が求められている。
 白羽の矢が立ったのは、小野寺五典氏(衆院宮城6区)だ。安全保障分野のエキスパートであり、即戦力として期待されての再登板だろう。
 防衛省は背広組の事務方と陸自の制服組との対立が深刻で、文民統制(シビリアンコントロール)の根幹を揺るがす事態に陥っている。隠蔽疑惑解明と引き裂かれた組織の立て直しが急務である。
 東北からは小野寺氏以外に、鈴木俊一氏(衆院岩手2区)が五輪相に起用され、吉野正芳復興相(衆院福島5区)が留任した。それぞれの立場で東日本大震災からの被災地復興に力を尽くしてほしい。
 自民党役員人事では、岸田文雄氏が外相から念願の政調会長の座を射止め、「ポスト安倍」の足掛かりを作った。窮地にある安倍首相を政策面で支えながら、閣外で力を蓄えて禅譲を狙う戦略だろう。
 ただ、憲法改正を巡っては9条改正に執念を見せる安倍首相と、慎重な岸田氏とでは立ち位置が異なる。改憲が後継の「踏み絵」になりかねず、岸田氏は難しいかじ取り役を迫られよう。
 内閣改造が政権浮揚につながるかどうかは、ひとえに安倍首相自身の政治姿勢に懸かっているのではないか。
 そもそも支持率が急落したのは森友、加計(かけ)学園問題の対応や強引な国会運営などで、安倍首相に対する積もりに積もった国民の不信感が一気に噴出したからに他ならない。
 今はさまざま疑惑について一つ一つ丁寧に、説明責任を尽くす謙虚さが求められる。たとえ問題閣僚を一掃したとしても、安倍首相が内向き志向を改めない限り、支持率の回復など到底望めまい。