「看板倒れ」に終わるのではないか、という懸念がつきまとう。安倍政権が「働き方改革」に続き、「休み方改革」として打ち出した「キッズウイーク」である。
 地域ごとに小中学校の夏休みの一部を春や秋に分散させ、それに合わせて親の有給休暇取得を促進する。公立校には義務化を目指し、私立校には協力を求める方針で、2018年の導入を目指す。
 政府はプラスの面ばかりを強調する。いわく地域ごとに連休が分散するため、行楽地などの混雑が回避できる。さらには観光需要が喚起されることで、地域活性化や雇用拡大につながるという。
 一方で「現実的でない」という批判が少なくない。長期休暇が分散化されたからといって、面倒を見る保護者が柔軟に休めるかどうかは別の話。日本人の有給休暇消化率は、先進国で最下位レベルにとどまっているからだ。
 企業に協力を求めるといっても、どこまで実効性があるのだろうか。いい例が2月から始まった「プレミアムフライデー(プレ金)」だ。
 最終金曜日、早期退社を推奨する官民挙げての取り組み。PRこそ華やかだったが、数字を見れば、普及しているとは到底言えない。
 5月に発表された東北経済連合会の会員企業アンケートによると、導入が5%ほどにとどまる。導入検討の予定を加えても、1割にも達しなかった。月に1度、早く退社することさえ難しいのが社会の現実なのだ。
 しかも、今回のキッズウイークは企業だけでなく、教育現場とも大きく関わる。
 中学教諭の6割が、時間外労働時間80時間という「過労死ライン」を超えるという勤務実態がある。松野博一文部科学相が6月、中教審に「教師の長時間労働の改善策検討」を諮問したばかりだ。
 長期休暇分散化の取り組みが、学校の年間運営にどう影響するのか。教師の長時間労働改善や子どもの教育環境の向上につながらなければ、逆効果でしかない。
 教育的な理由から、全国の一部の自治体では小中学校の「2学期制」を導入しており、「秋休み」が既にある。2002年度に導入した仙台市もそうだ。
 目的は異なるとはいえ、教育現場への影響や家庭での「秋休み」の位置付けなどは分析したのだろうか。
 日本人は休み下手と言われる。人手不足や過労死問題が深刻化する中、安倍政権が多様な働き方や休み方を「改革」として掲げる意義は否定しない。
 しかし、キッズウイークは「多様な勤労形態」と矛盾する、官による「休み方」の押し付けではないか。
 子どもの長期休みの間に、個人や家庭の独自判断によって、有給休暇を取得しやすい制度や環境をつくる政策こそ急ぐべきだ。