バカンスムードが暗転してしまった。夏休みの旅行者でにぎわうスペイン北東部のバルセロナ。車を暴走させるテロ事件が起き、13人が死亡、100人以上が負傷した。
 街を象徴するカタルーニャ広場から海岸に通じるランブラス通りを、ワゴン車がスピードを緩めず約700メートルにわたってジグザグ走行。夕方の散策を楽しんでいた観光客らを次々とはねた。
 何の罪のない市民を巻き込み、多くの人を恐怖に陥れるテロはあまりにも卑劣だ。断じて許すことはできない。
 過激派組織「イスラム国」(IS)が、系列のニュースサイトを通じて犯行声明を出した。シリアなどで掃討作戦を行う米軍主導の有志連合への報復だという。
 地元警察はテロ関連容疑で実行犯以外の4人を拘束したが、別の町でも同様の事件があり、1人が死亡。捜査当局は同一グループによる計画的なテロとの見方を示した。背後関係も含め、事件の全容解明に全力を挙げてほしい。
 欧州では、多くの人々が集まり、比較的警備が緩やかな繁華街などを狙う「ソフトターゲット」型のテロが近年相次いでいる。とりわけ防ぐのが難しい、車を「凶器」にした手口が目立つ。
 昨年7月には、フランス南部のニースで、男が大型トラックを暴走させ、花火見物をしていた80人以上が犠牲になった。今年6月にもロンドンのロンドン橋上で8人がはねられ、命を落とした。
 いずれもISが犯行声明を出しているが、直接の指令はなくても実行犯がISの思想に触発されて、自国で犯行に及ぶケースもある。ISは弱体化が著しいとはいえ、勢力は世界各地に拡散。アジアを活動拠点にした巻き返しの動きも懸念されている。
 日本も、ISから「攻撃対象」と標的の一つに挙げられている。3年後の東京五輪・パラリンピックの開催を控えており、これまで以上に国内でのテロに警戒しなければならない。他国と反テロの結束を強めていくべきだ。
 世界のテロ対策は現在、徹底した監視や通信傍受などでテロ情報をつかみ、事件を未然に防ぐ英米型の捜査方法が主流になりつつある。
 しかし、諜報(ちょうほう)活動で取り締まりをいくら強化しても、その隙を突いたテロがやまない。力による抑え込みには限界があり、根本的な解決にはつながらないのは明らかだ。
 まして、イスラム教徒が多い国からの入国を拒んだり、宗教の排斥を掲げたりする「自国第一主義」の非寛容な政策は、憎しみを増幅させ、悪循環を招くだけだろう。それこそISの思うつぼだ。
 貧困や差別、社会の分断などテロを生む土壌に目を向け、人々の不満を取り除く努力も一方では必要である。テロのない世界の実現に向け、今こそ、国際社会の連携、協調が試される。