日銀の金融政策を巡り、多様で広範な議論がなくなるのではないか。そんな懸念が金融市場で持ち上がっている。
 審議委員2人が先ごろ交代。現行の金融緩和策は副作用が大きいとし、マイナス金利にも長期金利の誘導などにも反対してきた木内登英、佐藤健裕両氏(共にエコノミスト出身)が退任したからだ。
 新たに就いたシンクタンク出身の片岡剛士氏と、メガバンク出身の鈴木人司氏は現行政策を支持する立場だ。
 これで、金融政策を決める総裁、副総裁2人、審議委員6人の9人全員が、第2次安倍政権による人選となった。日銀政策委員会が、緩和色の濃い「安倍カラー」に染められたと言え、「ご意見番」が姿を消した形だ。
 このため、反対意見を含む幅広い意見に基づく議論が損なわれ、政策の方向性が偏るのではないか、と危惧されている。
 現行の「異次元」緩和策は4年以上がたつのに、当初は2年でと約束した2%の物価上昇目標がいまだに達成されず、そのメドすら立たない。
 達成時期の延期は6回を数える。もう限界と言え、その副作用も目立ってきた。金融市場では、緩和策を手じまいにする「出口戦略」を日銀に求める声が高まっている。
 そんな中でも、新任の2人は2%達成を目指すという。考えが近い委員たちが、硬直した議論に陥ることは避けたい。政策決定には応変の柔軟性が必要であり、出口の時期を見誤るようなことなどあってはならない。
 現行の緩和策で日銀は金融機関から国債を購入し、市場に大量のお金を供給しデフレから脱却する狙いだった。国債を買い続けた結果、その総資産は500兆円を超えた。日本の国内総生産(GDP)に匹敵する規模だが、それでもデフレから抜け出せない。
 それどころか、国債発行残高に占める日銀の保有割合が4割に達し、赤字を中央銀行が穴埋めする「財政ファイナンス」色が強まり、財政に対する信認を損ないかねない。
 一方でゼロ金利下で国債発行ができる環境と相まって、政府の財政規律の緩みを一層助長する恐れがある。そうした副作用とリスクが膨らむ。
 国債と共に日銀が買い入れる株価連動型の上場投資信託(ETF)についても、年6兆円と巨額で株価形成をゆがめていると批判されてきた。
 こうした副作用、リスクを踏まえ、退任した2人は国債やETFの買い入れ減額も求めていた。現行政策に警鐘を鳴らす意味で、得難い役割を果たしてきたといえる。
 国民生活に大きな影響を与える金融政策を決めるため、正副総裁と審議委員はいずれも国会の承認を受けている。
 責任を負うべきは政権に対してではなく、国民に対してだ。国民の暮らしを第一に考えて議論し、政策を決めていく姿勢を欠いてはならない。