2020年東京五輪・パラリンピックは開幕が3年後に迫った。東日本大震災の被災地に「五輪効果」をどう結び付けるのか。その具体策がまだ見えてこない。
 予備費を除き1兆3850億円と見込まれる開催経費の抑制、輸送面を支えるハード整備の遅れ、猛暑への備え、テロ対策-といった多くの課題が浮かび上がる。大会テーマに掲げた「復興五輪」の実現もその一つだ。
 期間中、被災した宮城県では宮城スタジアム(利府町)でサッカー競技の男女1次リーグ、福島県では県営あづま球場(福島市)で野球・ソフトボールの一部試合がそれぞれ開催される。
 全国各地を一巡する聖火リレーもあり、「被災地出発」「沖縄県から北上」の案が示されている。東北では石巻市が出発地を目指している。
 現時点で五輪の被災地への関わりはこの程度にとどまる。鈴木俊一五輪相(衆院岩手2区)は「復興した姿を世界に発信する。被災地の食材を選手村で使ってもらい、関連施設建設には東北の木材活用を推進したい」と語るが、具体策はこれからだ。
 政府とともに東京都も「復興五輪」をリードすべきだ。小池百合子知事は昨秋、ボートとカヌー・スプリント会場を巡り、宮城県長沼ボート場への変更案を打ち出し「忘れかけていた復興五輪への関心を呼び起こす」と強調した。
 結局、会場は「海の森水上競技場」の新設が決まり、長沼案は見送られた。その後、小池氏が「復興五輪」を具体的に語る機会は減った。被災地が「小池劇場」の演出材料に使われたと感じた被災者は多かったのではないか。
 河北新報社が今年2月に実施した岩手、宮城、福島3県の被災42市町村長へのアンケートでは、「五輪が復興に役立つかどうか何とも言えない」と答えた首長が23人に上り半数を超えた。こうした消極的な反応の要因は「復興五輪」の理念が曖昧なままであることに尽きる。
 五輪で被災地が活気づく方策の一つとして、観光分野への波及効果を期待したい。
 観光庁によると、16年の訪日外国人旅行者は前年比21.8%増の2403万9千人で初めて2千万人台を突破。今年の上半期は1375万7300人で、前年同期を17.4%上回るペースだ。ただ、東北は震災前の水準をようやく超えた程度である。
 五輪に合わせ、多くの外国人を被災地に誘導する観光戦略を展開してはどうか。復興の現場を見てもらい、東北の観光地を周遊するツアーを設定する。官民一体となったキャンペーンになれば、震災の教訓を世界に発信する絶好の機会にもなる。被災3県を中心に東北の自治体も積極的に実現を働き掛けてほしい。
 「復興五輪」を看板だけにしてはならない。関係機関が問われている課題だ。