学校法人「加計(かけ)学園」(岡山市)が、愛媛県今治市で進める岡山理科大獣医学部の新設計画を巡り、文部科学省の大学設置・学校法人審議会(設置審)がきのう、8月中とされていた判断を保留した。
 林芳正文科相への答申は、10月以降に先送りされた。
 学生の教育環境が整っておらず、獣医師養成に課題があったとみられる。審査は継続されるものの、学園側は認可の答申を得るため計画の見直しを迫られた格好だ。
 学園は、5月にも入学定員や教員構成で修正を求められ、教員の増員など一部計画を改めた書類を設置審に提出した経緯がある。度重なる「駄目出し」は何を意味するのか。ここまで問題が大きくなった以上、文科省は保留理由を明らかにすべきだ。
 国家戦略特区諮問会議で事業認可を得て、学園が学部新設を申請してから5カ月。設置審は教育課程や財務、将来にわたる学生確保の見通しなどを慎重に審査したはずだ。
 ライフサイエンス分野をはじめ、最新領域での人材育成がセールスポイントだが、学生の実習計画が不十分だという意見もあったという。
 さらに定員を他大学に比べて数十人多く設定し、教員の確保に苦労したとされる。採用予定者は、65歳以上の再雇用者や教員経験のない若手の割合が高いという。
 「この計画で本当に教育の質を確保できるのか」と、深刻な疑義を持った委員がいたことは想像に難くない。
 一連の問題の核心は安倍晋三首相と学園理事長との親密な関係を元に、特区の事業者選定が官邸主導で進んだのではないか、という点にある。
 「行政がゆがめられた」と官邸側からの圧力を証言した前文部科学事務次官の前川喜平氏は「獣医師の需要をどの省庁がどのように検証したのか」と疑問を呈している。
 一方、特区担当だった山本幸三前地方創生担当相は「具体的な需要を完璧に描ける人はいない」などと、無責任な答弁に終始した。
 国会での論戦を経ても疑念が晴れるどころか、深まるばかり。秋の臨時国会でも徹底追及は避けられない。
 来年4月の学部開設を目指し今治市では新キャンパスの工事が進む。同市は市有地を無償譲渡し、県と共に96億円の建設費補助も決めている。
 地元では、市民団体が住民訴訟を起こす計画がある。答申が延期されたことで計画の可否を巡り、さまざまな動きが活発化するだろう。
 文科省は設置審の経過や日程を一切公表していない。しかし、国民が求めているのは結果でなく、プロセスの透明性に他ならない。揺らいだ行政の信頼回復のためにも情報公開に踏み切るべきだ。
 最後の関門として設置審の責任は極めて重い。優れた獣医師の育成を第一に、専門的見地から厳正な審査を続けてほしい。