インターネットを利用した情報のやりとりが災害対応でも重みを増す中、興味深い調査結果が先日公表された。
 昨年4月の熊本地震の被災住民を対象に文部科学省が行った調査(約3千人回答)で、会員制交流サイト(SNS)で地震情報を得た人ほど避難行動を思いとどまる傾向が高かったことが分かった。
 1回目の震度7の揺れで避難を思いとどまった理由として「SNSで情報を得たから」が大きな要因になり、逆に避難を後押しされた理由としては「近所の人に言われたから」などが挙がった。
 SNS利用では「避難しなくても大丈夫という気持ちを後押しする情報に目が行ってしまったのではないか」と専門家は推測している。
 ややおおざっぱな分析であり、詳細な検討がなお必要だが、災害対応で最も肝要な避難の判断において、広く流通するSNS情報が必ずしもプラスに働いていないとの結果は、警鐘として見逃せない。
 ツイッターやフェイスブックなどSNSによる災害時情報ではほかにも課題が指摘されている。特長と危うさの両方を踏まえ、活用策の検討をさらに進める必要がある。
 災害救助や救援などの場面で、SNSは既に必要不可欠な情報源として定着した。
 東日本大震災では、気仙沼市の被災者のメールが発信元になった救助要請がツイッターを通じて東京都に届き、東京消防庁によるヘリ派遣、救出につながった。
 7月の九州北部の豪雨でも被災状況を伝える動画などが発信され、孤立集落の把握や救出、救援物資やボランティアの派遣に生かされた。大災害時の安否確認にSNSを活用する仕組みも開発が進み、活用の幅は広がっている。
 一方で、拡散で情報が大量になり真に必要なSOSが埋没したり、必要以上の物資が殺到したり、といった混乱もたびたび指摘されてきた。
 熊本地震では「動物園からライオンが逃げた」という根拠のない書き込みによるデマの流布が問題になった。
 発信や拡散のルールを共有し、あくまで「きっかけ情報」の一つと位置付け、他の情報と組み合わせて災害対応の判断に生かす。そのような確認があって初めて、混乱のないSNSの活用策が可能になることを肝に銘じたい。
 生死を分ける避難の判断においては特にその確認が重要になる。
 冒頭の調査結果を踏まえれば、迅速な避難のためにはSNSの単一情報だけに依存することなく、隣近所との声の掛け合いなどより有効とされる情報を基本に据える意識が求められている。
 声掛けは人のつながりや訓練でより確実になる。SNSも同様だろう。ふだんから災害時を想定した情報交換を地域や仲間の間で繰り返すことで、信頼できるツールに高める努力が欠かせない。