2018年産主食用米から国による生産調整(減反)が廃止されるのに伴い、どのような予算措置が講じられるのか、農林水産省の18年度予算概算要求を注目していた。
 固まったその中身を見て、不安が頭をもたげてきた。
 生産数量目標の提示を含め国の関与が後退することで、主食米作りに回帰が進み需給が緩んで、米価下落を招く。そうした生産サイドの懸念は廃止決定時からずっとある。
 だが今回、不安をかき立てられたのは、減反に参加した生産者が対象の「直接支払い交付金」が予定通り廃止されるのにもかかわらず、その「代替措置」が見当たらないからだ。これでは、特に大規模な法人経営や集落営農組織が深刻な影響を受けかねない。
 この交付金は、旧民主党政権時代の戸別所得補償制度で創設され、額は10アール当たり当初1万5千円だった。
 経営の大規模化を進める安倍政権が減反廃止を打ち出すとともに、半額の7500円に改めた。メリットを半減させることで、高齢・兼業農家らの離農を促し、担い手に農地を集約するためである。
 問題なのは「安倍農政」が目指す大規模経営ほど、その廃止に伴う所得減が膨らみ、悪影響が及びかねない点だ。
 東日本大震災後、宮城県内の被災沿岸部を中心に、経営規模が100ヘクタール級の農業法人が相次いで誕生した。農地の利用権設定契約次第だが、例えば、そのうち60ヘクタールで来年度も従来並みに主食米を作るとすれば、単純計算で450万円の所得減となる。
 若者2人程度が雇用可能な額であり、その穴を農産物販売で補うのは容易なことでない。地域農業を引っ張る中核的担い手の経営が立ちゆかなくなる恐れがある。
 交付金は本年度、総額で700億円を超す。廃止に伴って、その大部分は生産者の収入減少を補う19年1月開始予定の新制度「収入保険」の国費分に充てられるという。
 収入保険は環太平洋連携協定(TPP)発効を想定した貿易自由化対策の一つで、農産物の価格低下や災害で収入が減った場合、過去5年間の平均収入の8割台を確保できるよう穴埋めする仕組みだ。
 だが、農家のいわばセーフティーネットであり、交付金廃止で所得減となる経営体の救済策にはなり得ない。
 安倍政権が減反を廃止するのは、経営判断の自由度を高め、農業の成長産業化を進めるためであり、その主体に据えるのが大規模経営だ。であるなら、交付金廃止で、その主役の取り組みに支障が出るような事態は避けねばならない。被災地の農業復興にもブレーキをかけてはならない。
 米価の動向も含め、経営の安定維持へ、激変をいかに緩和するか。年末に本格化する来年度予算編成作業に向け、政府・与党は生産現場の生の声を聞きつつ、万全の対策を講じるよう知恵を絞りたい。