所得格差の拡大や低所得層の増加が社会問題化すると、これにあらがう取り組みが、市井の中に立ち上がる。その好例が、企業や個人から提供された食品を生活困窮者に届けるフードバンク活動だ。
 食べ物の廃棄を減らすとともに、地域社会で貧困の防波堤になってきた。地域社会は、ひとまず健全に機能していると言っていいのだろう。
 しかし、無償支援の活動に利益を生み出す余地はなく、運営資金は会費や寄付に頼らざるを得ない。ふとしたきっかけで資金難に陥ることも珍しくない。
 宮城を中心に生活困窮者を支援するNPO法人「ふうどばんく東北AGAIN(あがいん)」(富谷市)が、緊急の寄付を募っている。
 必要なのはガソリン代、配送費など本年度後半の半年間の運営資金100万円。インターネットを通じたクラウドファンディング(CF)の仕組み上、29日までに目標額に到達しないと呼び掛け自体が無効になる。
 10年近い活動実績を誇る団体でも経常経費に事欠くとは驚きだが、背景にはフードバンクに特有の事情がある。
 東北AGAINの2016年支援実績は延べ5593世帯。半数近い2679世帯が東日本大震災に起因して生活困窮に陥った。類似団体のない福島など隣県からの支援要請も近年増えているという。
 公的補助金や民間助成金も貴重な資金源だが、これは使い勝手に難がある。申請しても助成されるとは限らない点が一つ。もう一つは、報告書作成など本来の取り組み以外に膨大な時間と労力が奪われてしまうというジレンマだ。
 国や県の復興支援、農林水産省や環境省の食品ロス対策など補助メニューは多数あるが、いずれも使途にはこまごま制約が付く。
 そこで東北AGAINは今春、独自の収入源を確保し、マンパワーを本来の活動に振り向けようと、障害者就労移行支援事業所を開設した。
 支援事業で財務基盤を強化し、同時に障害者は在庫整理や配送に従事して社会参加のトレーニングを積む。福祉の対象と見られがちな障害者が、もう一つの福祉である生活困窮者を支援する役割を担うという試みだ。
 ただ事業開始に伴い、職員の新規採用や所定設備の導入に相応の先行投資をせざるを得なかった。軌道に乗るまで、この1年が正念場だという。寄付を募っているのが本年度後半の半年間に限った資金という事情がここにある。
 東北AGAINのCFには出資特典もないが、それにも増して大事なことがあると訴えているのではないか。
 生活困窮者の多くは、病気や事故、震災など不慮の災難に見舞われた人たちだ。明日の自分かもしれない人々を支える団体が身近に在り続ける。そんな地域社会を私たち自身で守りたい。