にわかに信じ難い。日本が今、北朝鮮の核・ミサイルの脅威にさらされているというのに、である。
 安倍晋三首相が28日召集の臨時国会の早い段階で衆院を解散し、10月中の総選挙を検討する意向を与党幹部に伝えていたという。
 北朝鮮の軍事的挑発はエスカレートしてきている。3日に6回目の核実験を強行。15日には8月末に続いて中距離弾道ミサイル「火星12」を発射、北海道上空を通過し最長の約3700キロ飛行した。
 日本の安全保障が戦後最悪とも言える危機的状況にある中、あえて衆院解散に踏み切るならば、強い疑問を抱かざるを得ない。北朝鮮が「政治空白」の隙を突く懸念はないと言い切れるのか。極めてリスクが伴う決断だ。
 衆院議員の任期が残り約1年3カ月になったとはいえ、解散を断行する「大義名分」は何なのか。安倍首相は国民に対して明確に説明しなければならない。
 安全保障上の難題に目をつぶってまでも、国民に信を問うべきテーマは見当たらないのではないか。政治的好機を捉えて局面を打開するための戦略ならば、「党利党略」と言われても仕方があるまい。
 安倍首相に閉塞(へいそく)感があるのは確かだろう。自ら唱えた憲法9条の改正について、党内から異論が噴出。与党の公明党からも早期の発議に否定的な見解が示され、改憲機運がしぼんできている。
 ただ、与党が発議に必要な全体の3分の2議席を失ったとしても、目減りを抑えることができれば、求心力を維持できるという安倍首相なりの読みだろう。「リセット」された状況で、宿願の改憲の道を模索する考えかもしれない。
 野党側は臨時国会で、学校法人加計(かけ)学園の獣医学部新設問題や森友学園の国有地売却問題を追及しようと手ぐすね引いて待ち構えていた。安倍首相は「丁寧に説明する努力を積み重ねたい」と低姿勢で語っていたのに、これでは「疑惑封じ」ではないか。
 安倍首相がここまで強気になるのは、最近持ち直してきた内閣支持率はもちろん、足元を見透かした野党のふがいなさがあるからだ。
 小池百合子東京都知事の側近が旗揚げを目指す国政政党の準備が整わないうちに、という計算もあるに違いない。
 最も責任があるのは、「離党ドミノ」で混乱する民進党である。結束できず、離合集散を繰り返す旧民主党時代からの「悪弊」だが、もはやごたついている暇はない。
 野党の候補者が一本化できなければ、与党に勝てないのは自明の理。野党第1党として対立軸を掲げ、共産党を含む野党共闘を早急にまとめることができるかどうか、前原誠司代表の真価が問われる。
 政治は理念、政策も大事だが、最後は数である。このままでは、おごる「安倍1強」の再来になるとも限らない。