今夏、ベテラン知事が新たな任期に挑む知事選が二つあった。「多選」の是非が争点となり結果は明暗を分けた。
 兵庫県知事選(7月2日投開票)は、現職の井戸敏三氏(72)が3新人をかわして5選を果たした。
 3人が争った茨城県知事選(8月27日投開票)は現職の橋本昌氏(71)が7選を阻まれ、新人大井川和彦氏(53)=自民・公明推薦=が初当選した。
 双方で新人陣営は多選の弊害を訴え、現職は県政運営の実績で対抗した。兵庫では94万票余りを獲得した井戸氏が逃げ切ったが、次点候補も64万票を得た。過去4回のような大勝ではなかった。
 茨城では大井川氏が多選禁止条例の制定を訴えた。10月の衆院トリプル補選を見据えた自民、公明両党が全面支援したこともあり、49万票を獲得。橋本氏は「県民党」を掲げ安倍政権批判を展開したが、約7万票差で敗れた。
 首長の多選は過去にも問題視されてきた。住民に直接選ばれ、大統領制のような強い権限を持つ。1期4年の任期を重ねることで専制政治に陥りやすく、側近政治や組織の硬直化、議会とのなれ合いを生む-といった懸念だ。
 ただ、多選ばかりが争点化された側面は否めない。
 茨城では橋本氏が日本原子力発電東海第2原発(東海村)の再稼働に反対する姿勢を示した。大井川氏は「県民の意向を重視する」と態度を明確にしなかった。
 「7選阻止」の陰で原発再稼働を巡る論戦がかすんでしまったのは残念だ。
 東北の在任は三村申吾青森県知事が4期で最長だ。達増拓也(岩手)、村井嘉浩(宮城)、佐竹敬久(秋田)、吉村美栄子(山形)の各知事が3期で、内堀雅雄福島県知事が1期となっている。
 宮城の村井氏は10月の知事選で4選を目指す。「4選」は宮城では特別な意味がある。前知事の浅野史郎氏が「体制は陳腐化、様式化する」と3期で退任した経緯があるからだ。これを一つの「退任指標」と捉えれば、村井氏は多選に挑むことになる。
 対立候補はまだ出ていないが、多選の是非も含め幅広いテーマの論戦が望まれる。東北電力女川原発2号機(女川町、石巻市)の再稼働も争点になりそうだ。
 もとより、権力の腐敗を招きかねない極端な多選には反対する。ただ、地域ごとに政治課題は違い、望まれる首長像も異なる。東日本大震災からの復興のように一定の継続が求められる場合もある。
 多選知事が次に挑む場合、実績の強調だけでなく、新たに実行しうる政策を明示することが責務だ。住民は政策の成果を評価しながら次も託せるかどうか資質を見極め、対立候補が掲げる政策と比較して選択する必要がある。
 多選が争点となる選挙戦ほど政策論争の質を問いたい。