子どもへのわいせつ事件で失職した教員が、経歴を伏せて別の県の学校に復職し同様の行為を繰り返していた。そんなケースが相次いでいる。
 文部科学省は来年度から、教員の処分情報などを都道府県の枠を超えて共有し、採用時に生かせるよう「教員免許管理システム」を改修する。
 教員によるわいせつ行為は子どもへの最も卑劣な人権侵害だ。保護者の立場からすれば、問題を起こした教員には二度と教壇に立ってほしくないと望むのは当然だろう。
 しかし、全国の教育委員会によるこの種の情報共有は、真剣に出直しを目指す教員の閉め出しにつながりかねない。恣意(しい)的な運用がなされる可能性もあり、慎重な対応が求められる。
 わいせつ行為で懲戒処分を受けた公立学校の教職員は2015年度が224人。全教職員数の0.02%とはいえ増加傾向だ。免職になった教員が別の自治体で再び事件を起こすケースが目立つ。
 大概は処分歴を隠して他校に潜り込もうと画策している。戸籍や名前を変えている場合もある。5校を渡り歩いた元教員は「教職は採用されやすい」と、チェックの甘さを指摘したという。
 文科省が今回、5億円近い経費を投じて、システム改修に踏み切らざるを得なかったのはこのためだ。
 現行システムはそもそも経歴チェックが目的ではなかった。免許更新事務を円滑化するため、09年度の更新制度導入に合わせて整備された。
 懲戒免職や禁錮以上の刑罰を受け免許を失効すれば、官報掲載と共に情報が登録されるが、検索方法が複雑で共有化がうまくいっていない。
 改修後は志願者の名前を入力すれば生年月日や免許の種類、有効期限、失効中かどうかを確認できるようになる。
 ただ、免許の失効理由や官報に載らない停職処分の情報がどの程度共有できるかは不透明。自治体間で個人情報保護の規定が違うためという。
 仮に「わいせつ教員」の排除が目的なら実効性は低い。失効理由が全て共有されることになったとしても、わいせつ行為以外の情報をどう扱うかなど丁寧なルール作りが必要だ。運用上、さまざまな制約を受けることになる。
 新システムは再発防止策の一つにすぎない。研修や更生教育なども含めた現場の力で嘆かわしい実態から脱出するしかあるまい。
 教育職員免許法は、懲戒の対象になる「非違行為」による免許失効でも3年間経過すれば再交付を申請できると規定している。免許は再取得できても、一度失った信頼は決して取り戻せない。
 大半の教員は事件を起こすことなく、子どもたちと向き合っているはずだ。教員の果たすべき使命は重大である。初めて免許を手にした時の志を大切に、高い職業意識を持ち続けてほしい。