東芝の経営再建が軌道に乗るかどうか。不透明感はなお拭えないものの、立て直しに向け一つの大きなヤマを越えたのは確か。半導体子会社「東芝メモリ」の売却先を、米ファンドを軸とする「日米韓連合」に決めたことだ。
 東芝がどうしても避けねばならないのは、2年連続の債務超過である。株式上場が維持できなくなるからだ。株主に対する大きな背信である。
 財務立て直しのために決めたのが「メモリ」売却だ。その主力のフラッシュメモリーは、スマートフォンや大規模サーバーにも使われ、日本に残された数少ない有望な半導体ビジネスでもある。
 そこで東芝は、この子会社をできるだけ高く売ると同時に、その技術を日本に残そうと「二兎(にと)」を追ったようだ。このため、売却後の経営権を巡る思惑などから、売却先が二転三転したとみられる。
 日米韓連合に決めたことで売却総額は2.4兆円と、来年3月までに債務超過は解消できる見通しとなり、HOYAの参画もあり日本勢が議決権の過半を握ることになる。
 だが、思惑通りに事が運ぶかどうかは予断を許さない。
 まず、中国を含め製品需要が高い国の独禁当局の審査をパスする必要がある。日米韓連合にはメモリと競合する韓国半導体大手が含まれ、寡占化が進む恐れがあるためだ。来年3月までの審査通過に向け迅速に手続きを進めたい。
 さらには、合弁相手である米企業と、メモリ売却を巡って続く係争状態をいかに解消するかである。東芝が敗訴すれば、売却自体が破談に追い込まれかねない。何とか和解の道を探る必要がある。
 こうした課題を乗り越え新生・東芝メモリが足場を固めることは、東北の震災復興とも無縁ではない。新工場を北上市に建設する計画がある。2018年着工、20年ごろの量産開始を目指す。その投資・雇用はもちろん、経済波及効果への期待も大きい。
 メモリの売却は順調に進んでもらいたい。だがそうなったとしても、東芝本体の経営の刷新は避けて通れまい。
 経営の問題は15年に、業績を良く見せかけようとして利益を水増ししていた不正会計が発覚したことが始まりだ。
 組織的な利益水増しに関与していた歴代社長が辞任し、赤字決算に転落。さらに、系列の米原発大手で巨額損失が明らかになり、東芝は債務超過に陥ることともなった。
 冷蔵庫など白物家電や医療機器事業も売却してきた経緯がある。これだけの危機的状況を招いた原因と経営の責任を明らかにし、企業の体質を改めねばなるまい。そのことが経営再建には不可欠だ。
 今後は、鉄道システムを含む社会インフラ事業を中核に総合電機メーカーではない、どんな企業像を描くのかが問われる。福島第1原発の廃炉作業は、社としての使命であることを忘れてはならない。