大災害を身近に繰り返し経験している地域としては、なんとも心もとない数字だ。
 厚生労働省が省令に基づいて社会福祉施設に策定を指示している非常災害対策計画について、東北の高齢者施設の策定率を河北新報社が調べたところ、6割程度にとどまっていることが分かった。
 情報の入手方法、周囲との連携体制など、より実践的な項目まで全て盛り込んだ計画に絞ると、半分以下だった。
 岩手県岩泉町の高齢者グループホームで入所者9人が犠牲になった昨年8月の台風10号豪雨被災を受け、関連施設の備えの総点検、再確認の必要性が叫ばれる中、不十分な実態と言わざるを得ない。
 計画は豪雨、洪水だけでなく地震や火災も想定して策定を求められている。6年半前の東日本大震災の経験も踏まえれば、東北の多くの施設で計画の空白がこれまで半ば放置されていたこと自体を深刻に受け止めるべきだろう。
 災害時にいち早い対応が求められる施設側には一層の自覚が必要だ。地域連携で防災の構えを万全にするために、自治体など関係機関は働き掛けと支援を急いでほしい。
 計画と訓練のあるなしは災害対応に大きく影響し、生死を分ける焦点になる。ことし7月の秋田豪雨でもそれは裏付けられた。氾濫した雄物川に近い大仙市の特別養護老人ホームは避難計画に基づいて入所者81人を早期避難させ、犠牲や混乱を回避した。
 岩泉の被災直後の昨年10月に避難計画を策定し、11月には入所者を搬送する訓練、ことし6月には近隣住民や市職員も交えた学習会を開いて備えを進めたという。被災をわがこととして受け止め、実践に結びつける取り組みを重ねた姿勢が成果につながった。
 危険箇所に立地する高齢者施設のうち7割以上の施設が計画策定済みという岩手県でも、訓練まで取り組んだ施設は半数程度にとどまる。
 計画策定はあくまで出発点であり、計画を絵に描いた餅に終わらせない継続的な努力こそが求められている。
 水害や土砂災害対策に関しては、ことし6月に水防法が改正され、「要配慮者利用施設」に避難計画策定と訓練の実施が義務付けられた。
 高齢者施設など福祉施設のほか学校や病院なども対象に含まれており、より広範で深い取り組みが必要になる。
 所管する国土交通省のまとめによると、努力規定だったことし3月時点の数字で、地域防災計画に定められた東北の対象施設の計画策定率は約13%(全国約8%)。仙台市、つがる市、岩手県矢巾町などは50%を超えているが、ゼロの市町村が46もある。
 この機会を水害に限らず地震、噴火など全災害を視野に入れた備えの確立を急ぐ好機と捉え、官民挙げた取り組みを促進し、震災被災地として防災発信の先導役を務める役割を果たしていきたい。