国民に信を問うにはいかにも唐突で、「後付け」「急ごしらえ」との感を強くする。
 安倍晋三首相がきのうの記者会見で、28日召集の臨時国会での冒頭解散を表明し、その理由を明らかにした。「10月10日公示-同22日投開票」の日程で衆院選を行う。
 自ら「国難突破解散」と名付けたが、消費税の使途変更、北朝鮮への対応のいずれを取っても、今、解散に踏み切って訴えなければならないほど、説得力がある「大義名分」なのか甚だ疑問だ。
 透けて見えるのは選挙態勢が整わない野党の間隙(かんげき)を突いて政権延命を図ろうとする思惑である。「自己都合解散」の性格が浮き彫りになった、と言っていいのではないか。
 消費税の使途変更は、2019年10月に消費税率を10%に引き上げる際、「借金の穴埋め」に充てる税収増分を教育無償化、子育て支援など「人づくり革命」の財源に活用する、という。
 20年度に基礎的財政収支(プライマリーバランス)を黒字化する財政健全化目標については「困難」と認めた。深刻な国の財政状況に目をつぶってまで、現役世代の家計に配慮しなければならないのはなぜなのか。
 経済の実態は大企業、大都市部が潤っているだけで、地方には恩恵が及ばず、むしろ貧富の格差が拡大している。取りも直さず、5年目を迎えた「アベノミクス」の失速を意味しているのではないか。
 景気の好循環で国民所得を増やし、税収増で財政構造が改善するという「安倍シナリオ」が、崩れていることの証しに他ならない。
 これまでも「1億総活躍社会」「地方創生」「働き方改革」など、「看板」を次々と掲げてきたが、言葉が踊っている印象は拭えない。そもそも「全世代型の社会保障」を先んじて主張したのは民進党の前原誠司代表だ。「争点つぶし」と言うのも無理はない。
 圧力強化の継続を訴えた北朝鮮政策も整合性があるように見えない。「脅かしに左右されてはならない」と語ったが、安全保障の鉄則は隙を見せないことである。緊迫の度を増す中、危機管理を訴える一方で、解散で政治空白を生むのは自己矛盾ではないか。
 安倍首相は国連総会で「眼前の脅威」と非難していながら、自分は選挙にエネルギーを費やすというのでは国際社会からの信頼は得られまい。
 納得できない解散の理由を聞くほど、この時期をわざわざ選んだ訳は別にあるのではないかという思いが募る。
 野党が臨時国会で安倍首相の関与を徹底追及するはずだった学校法人加計(かけ)学園の獣医学部新設、森友学園の国有地売却問題と無縁であるまい。「疑惑隠し」が真意ではないかと、疑念が深まる。
 どれだけ装飾を施しても、不都合を覆い隠す「目くらまし解散」ではないのか。解散の「理」を見極めたい。