お得意の「小池劇場」だった。これまで国政に距離を置いていた東京都の小池百合子知事が一転して、新党「希望の党」を結成し、自ら代表に就いた。
 安倍晋三首相による28日召集の臨時国会冒頭での衆院解散表明にわざわざぶつけ、「サプライズ効果」を演出するのも「小池流」だった。
 自ら率いた地域政党「都民ファーストの会」が、都議選で圧勝した余勢を駆っての国政進出である。「選挙の顔」として先頭に立つことで、人気と知名度をてこに、大都市部の無党派層を取り込む戦略だろう。裏返せば、「小池旋風」頼みの党とも言える。
 これまでに先例があるとはいえ、都知事と代表の「二足のわらじ」を履くことには違和感がある。
 2020年に東京五輪を控え、築地市場の移転問題といった重要課題を抱える。足元の都政をおろそかにすれば、無責任のそしりは免れない。どこまで両立できるか、難しい使い分けを迫られよう。
 小池氏は記者会見で「改革と保守を満たす勢力をつくる」と語り、10月の衆院選では全国規模で候補者を擁立する意向を明らかにした。
 結党メンバーは首都圏の議員が中心だ。側近の若狭勝衆院議員や細野豪志元環境相のほか、民進党、自民党、日本のこころなどを離党した衆参両院議員らが名を連ねる。
 顔ぶれを見る限り、政策や理念で結集したというよりも、自分の選挙を優先した「お家の事情」がうかがえる。一定の数をそろえたいという小池氏の思惑と一致したのだろうが、離党組の「希望の光」という感じは拭えない。
 小池氏は既成勢力を「敵」と見立てる一方で、自らを「改革派」と位置付け、有権者の不満を吸収するポピュリズム的手法にたけている。選挙戦では自民党、民進党でもない第3極づくりをアピールしていくに違いない。
 「しがらみ政治からの脱却」を掲げるものの、政策の具体像は明確に見えてこない。若狭氏らが進めてきた新党綱領については「いったんリセットして」という。小池氏主導で公約づくりを急ぐのだろうが、準備不足は否めない。
 問われるのは立ち位置だ。基本的には保守勢力であり、自民党の補完勢力となる可能性はないのか。安倍首相が「希望というのは良い響きだ。フェアに戦いたい」とエールを送ったのは、選挙後の憲法改正での連携をにらんだ秋波とも受け取れよう。
 多数の候補者の擁立には不安が残る。政権与党の自民党でさえ人材発掘に苦しみ、新人議員の不祥事に悩まされているからだ。政治塾で学んだ塾生が国民の負託に応えられるかどうか、資質に疑問を抱かないわけにはいかない。
 時々に吹いた「風」で生まれた「チルドレン」たちが、消えていった歴史を繰り返してはなるまい。