第2次安倍政権が発足した2012年末から続く景気拡大が58カ月に達し、高度経済成長期の「いざなぎ景気」を超えた可能性が高いという。
 リーマン・ショックでどん底に落ちた世界経済が、持ち直す過程と軌を一にしていたとはいえ、主エンジンである日銀の異次元金融緩和が、円安株高の環境をつくり出し、輸出産業を中心にした企業業績を改善させたのは確かだ。
 現在も株価は政権発足時のほぼ倍の2万円を超え、足元の有効求人倍率は1.5倍とバブル期を上回る水準だ。
 政権に言わせれば、それもこれも経済政策「アベノミクス」の成果となる。
 だが大方の国民、特に地方にあって生活実感として景気が良くなったとは思えない。
 ここ数年、政府が春闘に介入し2%前後の賃上げが続いたものの、社会保障費の負担増もあって実質賃金は増えてはいない。従って個人消費は低迷したままだ。大型小売店で安売りの動きがやまないのはその裏返しでもある。
 マクロ経済の数値がいくら良くても「所得が増えた」「豊かになった」と国民が実感できない経済政策を今後も継続すべきなのかどうか。衆院選の争点の一つに違いない。
 法人税の減税に代表されるように、企業優遇はアベノミクスの特徴の一つだ。企業の業績改善を起点に、賃上げや設備投資などを通じ、その恩恵を滴らせる図式である。
 だが、その構図を機能させられないアベノミクスの限界を法人企業統計が物語る。
 直近の16年度と、政権発足時の12年度とを比較する。利益剰余金である「内部留保」は約406兆円に達し、102兆円も増えた。ところが、給与を含む人件費は約202兆円で5兆円伸びたにすぎず、設備投資も約43兆円と8兆円の増にとどまる。
 人件費と設備投資に回されたのはわずかな額で、積み上げられた100兆円を超す利益は手つかずだ。
 アベノミクスは、企業がもうける環境は整えた。企業にすれば、蓄えは世界経済の危機に対する備えの意味合いもあろう。だが肝心なのは、企業を導いて、利益をもっと消費と投資に結び付ける有効な手だてをアベノミクスは欠いていることだ。これがこの政策の限界ではないか。
 首相は先の記者会見で「人づくり革命」と共に「生産性革命」を掲げ「アベノミクス最大の勝負」と意気込んだ。施策を総動員し、企業による設備・人材投資を促し生産性を押し上げて「所得を大きく増やす」とも約束した。
 だが、生産性向上の成果も内部にとどまることはないのか。危惧せざるを得ない。
 経済を成長させるのは、国民の暮らしを豊かにするためである。そのことを与野党は肝に銘ずべきだ。与党は「この道」を練り直す必要がある。野党は選択肢たり得る説得力ある対案をまとめたい。