原子力発電は存続させるのか、それともできるだけ早い時期に本格的な「脱原子力」に踏み出すのか。いずれを選択すべきかは、東京電力福島第1原発事故の後、重い課題であり続けている。
 複数原子炉の同時メルトダウン(炉心溶融)によって重大な放射能汚染に見舞われ、今も5万人以上の福島県民が避難している。事故の記憶は薄れつつあるとはいえ、以前のように原子力を推進することに多くの国民はためらいを感じるだろう。
 さまざまな世論調査でも、原発の再稼働には否定的な意見が多い。河北新報社などが加盟する日本世論調査会の先月末の全国調査では、「原発再稼働反対」は63%と、「賛成」(32%)のほぼ2倍に達する結果になった。
 その最大の理由は無論、福島第1で世界的にも前例がない深刻な事故を引き起こしたことだろう。後始末に数十年の年月と20兆円を超える費用がかかるのだから、拒否感を抱かれるのも当然のこと。
 さらに、使用済み核燃料の最終処分方法が決まっていないことや、プルトニウムの利用を目指す核燃料サイクル政策への疑問なども背景になっているとみられる。
 事故から7年目になっても世論は相当厳しいが、自民、公明両党連立の安倍晋三政権は、なし崩し的な「原発回帰」を鮮明にしてきた。
 原子力規制委員会の審査に合格した原発については地元が同意すれば再稼働を容認している。3年前に策定したエネルギー基本計画では、原子力は一定の出力で発電して消費を支える「ベースロード電源」と位置付けられた。
 基本計画に沿った形で、2030年の原子力の電源比率は20~22%という数値が示された。火力(56%)に次ぎ、水力を含めた再生可能エネルギー(22~24%)と並ぶ重要電源の「お墨付き」をあっさり与えたことなる。
 メルトダウンを引き起こして世界に衝撃を与えたことを考えれば、いかにも原子力に甘い計画に映る。
 基本計画には「原発依存度を可能な限り減らす」という項目も含まれたが、具体的な動きは見られない。原子力を巡るここ数年の流れを点検すれば、「脱原発」は取って付けたような「空手形」と思われても仕方があるまい。
 衆院選では共産党、社民党に加え、民進党から分かれた「立憲民主党」や小池百合子東京都知事が率いる「希望の党」も原発ゼロを訴える構え。
 実現には目標年次の設定が不可欠だが、それだけでは十分でない。目指すエネルギー政策と、節目ごとのスケジュールも明らかにしなければならない。廃炉を確実に進めるには、個々の原発の検証も大切な作業になるだろう。
 「全体」と「部分」のいずれも具体的に示し、現在の原子力回帰に対抗する姿勢が切実に求められている。