任期満了に伴う宮城県知事選がきのう告示された。ともに無所属で、新人の元団体役員多々良哲氏(59)=共産推薦=と、4選を目指す現職の村井嘉浩氏(57)の2人による争いとなった。
 衆院選(10日公示)と同じ22日投開票で初の同日選となる。多々良氏は市民団体「新しい県政をつくる宮城県民の会」を母体に共産党の推薦、社民党の支援を受ける。自民党県議出身の村井氏は自民、公明両党との連携を強め「与党知事」を前面に出す。
 2人に注文しておきたい。総選挙が一気に政権選択の色彩を帯びたとはいえ、知事選が埋没するようなことはあってはならない。掲げた県政ビジョンの説明を尽くすことはもちろん、地域の政策課題を巡る議論を活発化させ、選択軸を鮮明にしてほしい。
 東日本大震災後、知事選は2度目だ。被災者が復興を実感し、全ての県民が将来に希望を抱くことができる地域社会を築く。宮城のリーダーに求められる政治理念は、この一点に絞られる。
 私たち有権者の選択眼も試される。中央政界の熱気に左右されることなく、震災復興の加速や地方自治の深化を託せる資質を見極めたい。
 最大の争点は言うまでもなく、村井県政3期12年への評価である。
 1期目は自動車産業誘致を軸とした雇用創出、震災に直面した2期目は復興の指揮を執り、3期目は仙台国際空港の完全民営化などに取り組んだ。4期目の公約には復興総仕上げ、富県宮城の継続、子育て対策などを据える。
 宮城の知事にとって「4選」は特別な響きがある。前知事の浅野史郎氏が「体制は陳腐化、様式化する」と3期で退任した前例があるからだ。一つの「多選指標」を示したこの言葉に照らせば、村井氏は「陳腐化」と向き合うことになる。選挙戦の焦点の一つであることは間違いない。
 再選(2009年)、3選(13年)で掲げた「県民党」の看板が見えにくいことは疑問だ。今回は衆院選の与党候補と連動して大量得票を狙う意図が透ける。旗幟(きし)を鮮明にすることは政治家に求められる資質の一つだが、政局を捉えた「変節」にも映る。
 多々良氏は「トップダウンから住民本意の県政への転換」を訴える。優先政策に福祉充実や中小企業と農林水産業振興、原発ゼロを掲げた。
 東北電力女川原発(女川町、石巻市)の再稼働を巡っては是非を問う県民投票の実施を打ち出した。一方、村井氏は「県民に委ねるのは無責任」と批判。再稼働を巡るスタンスに関しては「時期尚早」との姿勢にとどまる。
 今回と同じく村井氏と共産推薦新人が争う構図だった前回の投票率は36.58%で過去2番目に低かった。論戦を通じ、県民の期待や疑問に丁寧に応えて関心を高める。現職が果たすべき責務でもある。