急速に進展する北朝鮮の核・ミサイル開発が脅威となる中で、日本の安全保障の基軸が日米同盟であることは論をまたない。米国が打撃の「矛」、自衛隊が守りの「盾」という役割分担が基本である。
 しかし、安倍政権になってからは自衛隊の役割が拡大し、米軍との一体的運用が加速してきている。安倍晋三首相が掲げた衆院解散の大義名分の一つが北朝鮮対応だ。「国難」とあおる圧力一辺倒の政治姿勢に危惧を抱く。
 安全保障関連法にも基づき、海上自衛隊の補給艦が4月以降、北朝鮮の弾道ミサイル防衛(BMD)に当たる米イージス艦に洋上給油している。5月には海自の護衛艦が、米軍の補給艦を守る「武器等防護」を初実施した。
 いずれも米軍の意向などで新任務の実施は非公表だ。国民が実情を把握できないまま、なし崩し的に拡大していく懸念が拭えない。何らかの歯止めの議論が臨時国会で必要だったが、衆院解散でその機会も奪われてしまった。
 北朝鮮の脅威を理由に支出も膨らむ。安倍首相は防衛力整備の指針「防衛計画の大綱」(2013年12月閣議決定)の見直しを表明。防衛省は18年度概算要求に過去最大の5兆2551億円を計上した。
 目玉として陸上配備型の迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の設計費を盛り込んだ。1基約800億円といい、2基が必要とされる。これほど高額な買い物なのに、費用対効果の吟味があったのかどうか疑わしい。
 一定の防衛力の整備は必要だとしても、「聖域」扱いは避けるべきだ。借金漬けの日本の財政状況を勘案すれば、精査と共に、めりはりを付けるのは当然。北朝鮮の軍備増強に対抗していけば、軍拡競争のわなに陥りかねない。
 小野寺五典防衛相が、グアムが北朝鮮のミサイル攻撃を受けた場合、安保法で集団的自衛権を行使できる「存立危機事態」の認定もあり得ると語ったことも懸念材料だ。
 ミサイルによる迎撃というが、日本の現在の防衛力からいって不可能に近い。想定された対象外のケースでもあり、拡大解釈の危険をはらむ。
 「敵基地攻撃能力」を保有すべし、との強硬論も高まってきた。考えられているのが巡航ミサイルなどである。
 「保有は違憲ではない」というのが従来の政府見解だ。安倍首相は保有を否定しているが、自民党は政府に早急な検討を提言している。
 一歩間違えれば先制攻撃につながりかねず、「専守防衛」を逸脱しかねない。このような非現実的な議論がまかり通ること自体が、今の危うい状況を映し出している。
 国際情勢がきなくさくなると、勇ましい発言が幅を利かせてくる。ただ、北朝鮮が態度を軟化させない限り、事態は進展しない。譲歩を引き出す粘り強い外交交渉もまた、日本には欠かせないはずだ。