唯一の戦争被爆国・日本はむろんのこと、各国とその市民社会に、行動を促すメッセージだと受け止めたい。
 ノーベル平和賞に非政府組織(NGO)「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN)が決まったことである。
 核兵器を史上初めて非合法化する核兵器禁止条約の交渉入りを各国に働き掛け、条約採択につなげた。その取り組みが高い評価を受けた。
 禁止条約は7月に国連で122の国と地域の賛成で採択され、来年にも発効する。
 ただ、米ロを中心とした核保有国に加え、日本を含め米国の「核の傘」という抑止力に自国の安全保障を頼る国々は条約に署名しない考えだ。
 だが、授賞理由の中でも触れられているように「核なき世界実現に向けた次の一歩を踏み出すには、核保有国の参加は不可欠」といえる。
 今回の受賞決定を弾みに、ICANと共に各国の市民社会は、核廃絶に向け大きなうねりを起こしたい。そうした国際世論が、核抑止力を巡る核保有国とその同盟国の観念を変える「圧力」となることを期待せずにはいられない。
 ICANは平和や軍縮、人権問題などに取り組む100カ国以上、約470の団体から成る。今回の授賞理由として挙げられたのは、核禁止条約の制定に向け「革新的な努力を尽くした」ことだ。
 その核心をなしたのは、「同じ苦しみを、どの国の誰にも味わわせてはならない」と活動する広島、長崎の被爆者らとの連携だ。その二人三脚を「原動力」に核兵器の非人道性を訴え続けて、実を結んだのが禁止条約といえる。
 そう捉えれば被爆者も受賞したと言えよう。同じ国民として、頭が下がる思いだ。
 被爆者たちの平均年齢は81歳を超えている。悲願である禁止条約が国連で採択されたというのに、肝心の日本政府は背を向けたままだ。
 今回の授賞決定について「核廃絶の目標は共有していても、アプローチが異なる」(外務省)として、安倍政権は首相談話を発表していない。禁止条約は核保有国と非保有国との対立を深めるだけだとの立場とはいえ、情けない。何とも狭量ではないか。
 衆院選の公示が10日に控える。ICANのフィン事務局長は、受賞決定が日本政府の条約反対の姿勢を変え署名へと進む契機になってほしいと選挙での論戦を注目する。同感だ。骨太の議論を望む。
 確かに、核・ミサイル開発をやめない北朝鮮という脅威があり、米朝の間では首脳による「核戦争」まがいの言葉が飛び交う。だが核抑止は不毛の軍拡競争しか生まず、ひとたび核が使われれば、どんな惨状と苦難が待つかを、われわれは知っている。
 「核なき世界」を訴えた米国のオバマ前大統領も平和賞を受けながら、核軍縮は進まなかった。今度こそ、この新たな機運を大切に育みたい。