国民の疑念が一向に晴れない。「森友学園」の国有地売却問題と「加計(かけ)学園」の獣医学部新設問題である。臨時国会の冒頭での衆院解散は、一方的な「議論封じ」に映った。安倍晋三首相の政治姿勢が改めて問われることになる。
 今月中には国有地売却の会計検査院報告と獣医学部開設の認可判断が出る見通しだ。野党に追及される前に解散し「みそぎ」を済まそうとでもしたのならば、国会軽視と言われても仕方があるまい。
 共同通信社の9月下旬の世論調査では、約8割が政府の説明に「納得できない」と答えた。首相に近い民間人のために政治家や官僚が立ち回り、両学園に便益がもたらされた-。そんな構図を国民は疑っているのではないか。
 安倍首相は解散発表の会見で、「野党の批判を受け止めながら、国民に説明する」と謙虚に語ったが、一向にその気配が見えてこない。
 新たな事実も明らかになっている。8億円の値引きがされた問題では、森友学園前理事長の籠池泰典被告=詐欺罪などで起訴=と、財務省側が価格協議を行っていた音声データが見つかった。
 「ゼロ円に」「1億3千万円以下は無理」などのやりとりの録音があり、「事前の価格交渉はない」としていた財務省の国会答弁と食い違う。
 森友学園側は、この協議以前から新設を目指す小学校の名誉園長だった安倍首相夫人の昭恵氏の名前に触れ、強気の交渉をしていたとされる。
 国家戦略特区制度による学部新設の門戸が加計学園だけに開けられた問題。その究明もストップしたままだ。
 安倍首相は7月の閉会中審査で「学園の計画を初めて知ったのは今年1月」と明かした。加計学園の加計孝太郎理事長は昨年、この問題で関係3閣僚と相次ぎ面談している。長年の友人の首相が計画を知らないのは不可解だ。
 「私から指示や依頼を受けた人は1人もいないんです」と安倍首相は自身の潔白を繰り返すが、事の本質は公正・公平なはずの行政がゆがめられたのかどうかにある。
 最高権力者の周辺で特定の人が優遇されることがあったとしたら、国に対する信頼は根底から崩れる。国民の不信感がそこに向けられていることを認識すべきである。
 特区の事業認定に当たって透明性を高める対策案の検討を首相が指示したという。存否確認のずさんさが問題になった公文書管理の見直し作業も行われている。
 必要な対応だが、公表されていない文書や語られていない事実がまだあるはずだ。加計理事長や昭恵氏の国会招致を行わないまま、解明の議論を止めるわけにはいくまい。
 政治に求められるのは情報開示と説明責任の真摯(しんし)な姿勢だ。そして議論の場を確保する努力を怠らないこと。10日に公示される衆院選ではその当たり前のことが問われる。