衆院選がきのう、公示された。「自民党・公明党」「希望の党・日本維新の会」「共産党・立憲民主党・社民党」の三つどもえの構図。選挙結果で政権の枠組みが変わる可能性もあり、今後の日本の進路を占う重要な審判となる。
 今回の突然の衆院解散で野党再編が一気に進み、民進党が希望と立民に分裂した。めまぐるしく動いた展開に有権者の戸惑いは否めない。まずは政策、理念が問われる。岐路に立つこの国の将来像をどう描くのか。各党とも明確で分かりやすく訴えてほしい。
 5年近くの「安倍政治」の総括が、重要な争点であることは言うまでもない。看板の経済政策である「アベノミクス」の功罪はもちろん、首相の「共謀罪」法などを巡る国会運営や、森友・加計(かけ)問題への政治姿勢も論じられよう。
 安倍首相が衆院解散の「大義名分」として挙げたのが、消費税増税の使途変更だ。増収分を借金返済の穴埋めから、子育て世代支援などに振り向けるという。一方、野党は消費税増税凍結を主張する。
 どちらにしても借金が1千兆円に積み上がった財政の再建の道筋を示さなければ、政党として無責任だ。「痛み」を伴う改革から逃げてはならない。財源の手当てを含め踏み込んだ論戦を期待する。
 さらに解散の理由として、安倍首相は緊迫する北朝鮮情勢への対応も挙げた。安倍政権が推進する「圧力路線」の先に、何があるのかが見えてこない。いたずらに危機感をあおるばかりでなく、事態打開のための方策について冷静な議論を深めてほしい。
 憲法改正も大きなテーマで、自民が公約の柱に掲げた自衛隊明記の9条改正の是非も問われる。希望、維新は論議に前向きなのに対して、公明は慎重で、共産、立民、社民は反対で足並みをそろえる。
 他の項目についても「教育無償化」「地方分権」「首相の解散権制約」など、各党の主張はまちまち。現憲法に本当に不備があるのか。改憲の必要性について有権者に対して具体的に示すべきだ。
 東日本大震災の被災地に目を転じれば、「復興の加速」とは名ばかりで、暮らしの好転の兆しはうかがえない。経済的な恩恵から遠ざけられ、貧困と格差は深刻さを増す。
 今回の総選挙では与野党問わず、被災地に寄り添う政策が、かすんできたのは極めて残念だ。震災の「風化」加速への懸念が募る。
 東京電力福島第1原発事故で未曽有の被害を受けた被災地にとって、「原発ゼロ」政策にも注目したい。票目当ての「お題目」ではなく、工程表まで提示してこそ説得力を持つことを認識してほしい。
 東北の小選挙区は青森、岩手で定数が各1減となり、宮城、福島でも区割りが改定された。有権者に必ずしも周知徹底されているとは言えず、選挙管理委員会などのさらなる努力を求めたい。