被害者に対する賠償額の上積みだけでなく、対象の拡大を認めた意義は大きい。現行の賠償制度の見直しを迫る判決と言えよう。
 福島第1原発事故の被災者集団訴訟の判決で、福島地裁は10日、国と東京電力の過失責任を認定し、福島県内外の原告約3800人のうち約2900人に総額約5億円の賠償金を支払うよう命じた。
 国、東電双方の責任を認めた司法判断は、ことし3月の前橋地裁判決に続いて2例目となる。
 判決は現在の賠償制度の問題点を洗い出した。具体的な賠償について、放射線量などを基準に地域や避難の形態を個々に見極めて算定。国が定めた「中間指針」に基づく賠償額で不十分と判断できるケースには、柔軟に上積み金額を認定した。
 その結果、当初対象外にされた福島県南や茨城県の住民に対しての支払いも認めた。一方、宮城県丸森町に住む原告については、子ども・妊婦以外の損害は生活圏の放射線量値が福島県南などより低いため、認定しなかった。
 判決が「人は放射性物質による汚染で、平穏な生活を妨げられない利益を持つ」と述べたことを考えると、権利を侵害されて同様の辛苦を味わわされた原告には不満が残ったのではないか。
 判決は国の責任について、政府が2002年7月に公表した長期評価を捉えて、「国が直ちにシミュレーションをしていれば、津波は予見できた」と厳しく指弾した。
 東電に安全対策を取らせなかった不作為についても「許容される範囲を逸脱している」と指摘。東電に対しても「津波対策を怠った」と過失を認定した。
 「仮に東電に対策を命じていたとしても事故は防げなかった」などと、国の責任を否定した9月の千葉地裁判決とは異なる判断となった。
 福島地裁判決は、国策として原発を推進してきた国の監督権限をより重視し、安全対策の感覚の鈍さに猛省を促した格好だ。
 ただ、居住地の空間放射線量を事故前の水準以下に下げるよう求めた「原状回復」については、「除染方法が特定されていない」として却下した。
 福島の原告団は約30件ある同種の集団訴訟の中でも参加者が最多で、全国の「総本山」と位置付けられる。今後の訴訟に影響を及ぼす可能性もあるだろう。
 東電は再稼働に向けた柏崎刈羽原発(新潟県)の新規制基準の審査に事実上、合格した。「福島の反省を忘れない。賠償や廃炉をやり遂げる」と表明しているが、トラブルは後を絶たない。
 事故から6年7カ月。衆院選で「原発ゼロ」を巡って活発な論戦が交わされている。判決から何を導き出すか、国や東電だけでなく、われわれ有権者も問われている。