子どもの豊かな生育を保障するのは政治の務めだ。有効な少子化対策が、国の将来を決めることになる。
 衆院選では全政党が教育の無償化など子育て支援策を公約に掲げる。「甘言」に左右されず、本当に役に立つ政策なのかを見極めたい。
 日本は先進国の中で教育への公費支出割合が低い。特に幼稚園と大学の段階で家計への負担が重い。公費支出を手厚くするとしたら、格差の是正と公平性が大切な視点だ。
 焦点の幼児教育・保育の無償化は、安倍晋三首相が衆院解散前に表明し、自民、公明両党が公約にした案が議論の軸。全ての3~5歳児と、低所得世帯の0~2歳児の無償化を行うという。財源は消費税率を10%に引き上げた際の一部を充てる意向だ。
 将来の義務教育化を見据えた幼児教育の充実に近づく可能性があるだろう。しかし、幼稚園などの料金体系は所得に応じた段階制である。
 3~5歳児が所得制限なしで無償化となれば、高所得世帯ほど恩恵を多く受けることになる。それでは教育格差が拡大するばかりだろう。
 国民から広く集めた消費税の使途としてふさわしいのかどうか。ばらまきでなく一人親世帯など弱者を考慮したきめ細かな支援をすべきだ。
 日本維新の会は、人件費削減などで財源を捻出した大阪府の先行例を挙げ、「増税しなくても無償化は可能」と訴える。無償化効果で転入者が増えた府内の自治体を見ると、保育所への申し込みも増加し、待機児童数は解消されていないという。
 2017年度末までに「待機児童ゼロ」を目指した政府目標は既に破綻し、全国で約2万6千人(4月時点)が保育所に入れないでいる現実がある。「待機児童解消の方が先では」という声が上がるのも無理はない。
 与党は待機児童問題に前倒しで取り組むとし、希望の党も無償化を掲げつつ「待機児童ゼロ」を法的に義務付けるべきだと主張する。
 無償化と待機児童解消は背反しないが、切迫度が全く違うのではないか。現状では待機児童問題を早く解決した上で、無償化の制度設計を固めるのが筋だろう。
 共産党は待機児童の解消と共に無償化の推進、立憲民主党は保育士、幼稚園教諭の待遇改善による受け入れ側の底上げも掲げる。
 いずれの党の主張も財源の手当てが前提であることに変わりない。選挙戦では何で賄うのか、突っ込んだ議論に欠けているのは残念だ。
 ただ、あれもこれもと施策を並べるだけでは、子育て世帯は困惑する。どの対策をどんな手順で打てば問題が解決するのか。使う側に立った発信力を政党は持つべきだ。
 スピード感は大事だけれども、政治の側の理念が伝わらないと、少子化社会は何も変わらない。