突然の解散で幕を開けた衆院選は自民、公明の与党が定数の3分の2議席を確保する大勝となった。安倍晋三首相は引き続き強固な基盤で政権を担うことになる。
 野党は「希望の党・日本維新の会」と「共産党・立憲民主党・社民党」の2極に分かれて挑んだが、安倍政権の批判票を奪い合い、与党を利する結果となった。
 1人の候補者だけを選ぶ小選挙区で、1強に対抗するためには野党が束にならなければ、勝算に乏しいことは自明の理。希望の党の旗揚げから民進党の分裂に至る野党再編のドタバタ劇に、嫌気が差した有権者も多かったろう。
 その意味では、与党は「敵失」に助けられたと言っていいのではないか。積極的な支持というよりは、「他によりましな政党がない」という「消去法」での判断が働いた側面が否めない。
 5年近くの「安倍政治」が、全て信任されたと慢心されては困る。ただでさえ「1強」のおごりが目立ち、強引な国会運営に加えて閣僚らの失言、不祥事が相次いだ。国民の声に耳を傾ける謙虚な政治姿勢が一段と求められる。
 公明のブレーキ役としての存在意義も増すだろう。
 希望を含めた改憲勢力が、国会発議に必要な3分の2以上を占めた。安倍首相は「自衛隊の存在」を明記する9条改正に改めて意欲を見せたが、エネルギーを注ぎ込む政策は別にあるのではないか。
 今、政権として最優先で取り組むべき課題は大企業、大都市圏にもっぱら恩恵をもたらす「アベノミクス」の軌道修正だろう。
 東日本大震災の被災地をはじめ、取り残された地方は貧困と格差の加速が深刻になってきている。安倍首相はまず言葉通り、景気の実感が列島の隅々にまで届くように全力を傾注してほしい。
 自民にすれば、決して楽な選挙ではなかった。唐突な解散は「自己都合」との批判を浴びた。逆風の最たるものは森友・加計(かけ)学園問題だったが、選挙で「みそぎ」が済んだわけではない。今後も丁寧な説明が求められる。
 この問題がぼやけてしまったのは、野党の離合集散と無縁であるまい。保身、打算と紙一重のごたごたで、自民に代わる受け皿づくりへの期待はしぼんでしまった。
 ただ、リベラル的な考えを求める民意をくみ取った立民が野党第1党に躍進、東北でも比例代表で議席を確保した。東北の小選挙区では野党系の無所属候補が岩手、宮城、福島で計4議席を獲得したが、伸び悩んだ希望は岩手の1議席にとどまった。
 野党は厳しい結果を真摯(しんし)に受け止め、政策を軸に新たな連携の道を模索しなければなるまい。重い野党の存在があってこそ、政治に緊張感がもたらされる。そうでないと、おごりの悪弊がまた、もたげてくるとも限らない。