覇権主義的な動きが、より強まりはしないか。わが国をはじめ周辺各国は、そう懸念せざるを得まい。
 事実上の国の最高意思決定機関である中国共産党大会を終え、きのう発足した2期目の習近平総書記(国家主席)指導部のことである。
 習氏は、今大会で権力基盤と共に歴史的地位まで確立し「1強体制」を一層、盤石にした。自らの名を冠した指導思想を党規約に盛り込むことに成功したからである。
 同様の例は建国指導者の毛沢東、改革・開放を主導した故〓小平氏しかなく、2人に並ぶ別格の権威を得ると同時に、3期目を含め長期支配にも道筋をつけたといえる。
 なぜなら「習思想」は「中華民族の復興」を実現するため、約30年後の新目標として掲げた「強国」建設に向けた指導指針と位置付けられたからだ。今後、誰が指導者になっても長期間にわたり、この思想に縛られることになる。
 だが、その強国づくりには危うさが付きまとう。
 大会の中で習氏は海洋進出や軍備増強を打ち出した。東・南シナ海で自国の権益主張を強める方針を表明。「今世紀半ばに世界一流の軍隊をつくり上げる」と米国に並ぶ軍事力を整える考えも示した。
 現代版シルクロード経済圏構想「一帯一路」といった1期目の取り組みとも考え合わせれば、米国が主導して築いた戦後の国際秩序に対抗し、中国主導で新秩序づくりに挑もうとの野心がうかがえる。
 だが、そのことは地域の安定に不可欠な国際関係を損ないかねない。日米を含め周辺国との摩擦を強めることにならないか、危惧される。
 「覇権」のせり出しが心配されるのは「外」ばかりではない。「内」もそうだ。
 経済成長に伴い貧富の差が拡大し、環境汚染も深刻化している。全ての国民が豊かになる「共同富裕」がうたわれてもその道筋は示されず、環境対策では当局が強引に工場閉鎖を迫る手法がやまない。
 法治を隠れみのにした民主活動家の投獄や、人権・民主化を巡る言論の抑圧、少数民族に対する弾圧も続く。
 習思想で注目すべきは、14の基本方策のうち第一に掲げられているのが「一切の活動に対する党の指導」であることだ。軍事、経済、学術界を含め全てに党の指導を要求。今後、社会の統制が一段と厳しくなるのは間違いない。
 習思想に基づく強国建設路線は国際協調、民主主義や自由、人権といった価値観と衝突して、国際社会と摩擦を生み、国内では社会の矛盾を増幅させることになろう。
 それは、共産党が全てに優先する一党独裁体制だからに他ならない。求められるのは「覇道」ではなく「王道」を掲げた党改革ではないか。
 習氏の言動をいさめる存在が国内に見当たらないのだとしたら、その役目を担うのは国際社会以外にあるまい。


(注)〓は登ヘンにオオザト