国の予算執行の「番人」が疑義を突き付けることになった。学校法人「森友学園」への国有地売却問題の疑念は、一段と深まったと言えるのではないか。
 ごみ撤去費として約8億円が値引きされた経緯を調べていた会計検査院が撤去費は2億~4億円で済み、値引き額は最大6億円過大だったと試算していたことが分かった。
 国有地の値引き問題は一連の「森友疑惑」の核心部分だ。国のずさんな算定によって、学園側が法外な利益を受けた可能性が高くなった。
 「(売買)価格は適切だった」と言い続けてきた財務省近畿財務局による国有財産処分の不手際が、浮き彫りになった格好だ。背任容疑で捜査する大阪地検特捜部は、国民の疑問に応えるよう徹底的にメスを入れる必要がある。
 ごみ撤去費の見積もりは、「地下9.9メートルまでごみがある」とした学園側の申告に沿い、国交省大阪航空局が詳細に調べ直さないまま以前のデータを基に行った結果だった。それによって鑑定価格9億5600万円の土地が大幅値引きされ、1億3400万円で昨年6月に売却された。
 しかし、検査院がごみの混入率を実態に合わせて計算し直したところ、撤去費は約2億円にとどまったという。別の計算方法でも試した場合でも4億円余りだった。
 焦点は、学園の小学校名誉校長に安倍晋三首相夫人の昭恵氏が一時就任していたこととの関係だ。官僚の側が忖度(そんたく)し売買交渉に手心を加えていたとしたら、行政をねじ曲げる不公正な行為に他ならない。国会への参考人招致も検討すべきではないか。
 売買を巡って価格調整をうかがわせる音声データの存在も明らかになっている。学園側が「ゼロに近い形にしてほしい」と申し入れ、財務局側が「努力するが、1億3千万は下回らない」などとした。
 売値が相手の要請に沿って決められたというのならば、通常では信じ難い話だ。
 こうしたことを裏付ける資料は極めて少なく、検査院は関連文書の管理に問題があったとみている。ごみの撤去単価に関する文書や、国と学園との交渉記録が破棄され、正確な見積もりができなかったという。
 大半は省庁内で「1年未満で廃棄できる文書」に分類されていたためだ。財産処分に直接つながる行政文書である。意図的な証拠隠しを疑われても仕方あるまい。
 安倍首相は「真摯(しんし)に説明する」と繰り返してきた。衆院選では自民党が大勝したが、安倍内閣の全てを信任したわけではない。加計(かけ)学園問題も含め、説明が尽くされたとは判断していないからだ。
 選挙が終わって、首相がこうした問題はもう過去の話と高をくくったとしたら、国民から手痛いしっぺ返しを受けることを覚悟しなければならない。