全国の小中高校などが2016年度に把握したいじめが32万件を超えた。文部科学省が公表した児童生徒の問題行動・不登校調査によると、前年度より約10万件増え、過去最多を更新した。
 「けんか」や「ふざけ合い」など小さなトラブルを広く見渡すよう文科省が促したことが増加の一因だという。
 いじめの兆候を早期に見つけ、対処することは深刻な事態を招かないための鍵だ。発見の手段はアンケートが5割超。本人の申し出は約18%で、積極的に言い出せない傾向に変わりはなかった。
 学校関係者は当事者らの話を丁寧に聞いて、問題の解決に導いてほしい。
 実際、全体の約90%が解消したというが、一件一件の経過をフォローすることが欠かせない。形を変えて再発したり、見逃されたりしているいじめは少なくないはず。
 肝心なことは、数値上の成果を上げることではない。子どもたちが発するSOSのサインに大人がどうやって気付けるかだ。その感度を高めることに全力を挙げてほしい。
 東北各県も今回、全県で増加した。子ども1000人当たりで見ると宮城が77.9件で全国3位の高水準だった。山形が5位。青森、岩手の件数は前年度に比べ激増した。
 ここ数年、いじめによる中学生の自殺が各地で相次いだことと無関係ではあるまい。原発事故で福島から他県に避難した生徒が転校先でいじめに遭うケースも表面化した。
 学校現場の危機感が高まっているのなら、増加を肯定的に捉えることもできよう。
 しかし、自殺に至った事例などでは、学校や教育委員会が、いじめ被害を認識しながら適切に対応しなかったことが、度々問題になった。
 いじめ防止対策推進法は、子どもの心身に大きな被害を与えるいじめを「重大事態」と規定。発覚次第、直ちに調査に入るよう求めている。16年度の重大事態は全国で400件と増加の傾向にある。
 仙台市青葉区で今年4月にあった中2男子の自殺では、昨年行われたアンケートで本人がいじめを訴えていたにもかかわらず、校長は当初「その都度解消した」と、いじめとの関連を認めなかった。
 その後に教諭2人に体罰を受けていたことも発覚。重大事態を見過ごした学校や市教委と遺族との信頼関係は断たれ、第三者機関による調査すらいまだに始まっていない。
 いじめ根絶は、依然厳しい道のりと言わざるを得ない。多忙な学校現場だけで全てに対応できないのは明らかだ。地域や外部団体との連携、カウンセラーなどサポート体制の強化は不可欠であろう。
 ただ、子どもの痛みに向き合う姿勢を欠いたままでは、いくら綿密なアンケートや防止策を講じても問題は先に進まない。保護者や地域との信頼を築く要であることを学校や行政は肝に銘じるべきだ。