レジ袋やペットボトルなどプラスチックごみによる海洋汚染に、世界で危機感が強まっている。一方で周囲を海に囲まれた日本は、欧米に比べて取り組みの立ち遅れが指摘されているのが実情。環境や漁業、観光への悪影響を考えれば、対応を急ぐべきだろう。問題意識を高めたい。
 国連のグテレス事務総長は6月、海の持続的利用や資源保全に関する「海洋会議」の演説で「長期的な地球規模の破滅を防ぐため、短期的な国家の利益は棚上げすべきだ」と述べ、海洋保全に向けた国際協調を各国に呼び掛けた。
 米国の大学研究チームによれば、1950年以降に世界で製造されたプラスチック製品の総量は推計で83億トン。うち、ごみとして捨てられたのは、東京スカイツリーの重さに換算し約17万個分に当たる約63億トンに達する。2050年にはごみが120億トンに倍増するとみられている。
 ごみのほとんどがリサイクルされず、埋め立てられたり捨てられたりし、年に少なくとも800万トンが海に流出しているという報告がある。
 深刻な問題と捉えられているのは生態系への影響だ。
 プラスチックはポリ塩化ビフェニール(PCB)など環境中の有害物質を吸着する。環境中で壊れて細かくなり、5ミリ以下になった「マイクロプラスチック」などを餌と間違えて食べた海鳥の体内で、有害物質が溶け出す。
 魚や貝にも取り込まれる。仏国立研究機関の実験では、マイクロプラスチックを含む海中でカキを飼育すると、卵の数や精子の運動能力が低減し、発生する幼生が4割減ったとのデータもある。
 人への影響はどうか。魚介類を通じて人が取り込んだプラスチックは自然に排せつされるが、有害物質は人体に蓄積する恐れがあるという。
 影響に関する科学的解明はまだ十分でないとされ、研究の進展が待たれる。とはいえ、広大な海にばらまかれたごみを回収するのは不可能に近い。しかも人が作り出した、自然にとっての「異物」は長期にわたって残存する。
 環境省の最近の調査では、日本周辺海域は世界の海の27倍ものマイクロプラスチックが存在し、「ホットスポット」になっている。早急な発生源対策がいわれるゆえんだ。
 海外では既にレジ袋禁止、ペットボトルの飲料水販売禁止などを決めた国や自治体もある。レジ袋に関し日本に国としての規制はない。海洋国家、海産物の大量消費国として世界をリードする施策を検討し、海へのプラスチック流出が多いとされる東・東南アジアを先導してほしい。
 再利用できる製品の普及、代替品の開発は直ちに進めるべきだ。消費者としてもコンビニでレジ袋をもらわない。洗浄効果を高めるマイクロプラスチックを使った洗顔料などの製品を避ける。そんな対応を考えたい。