多くの疑念を引きずったまま、開学が認められていいのだろうか。得心がいかない。
 学校法人「加計(かけ)学園」(岡山市)が愛媛県今治市で進める岡山理科大獣医学部の新設計画について、文部科学省の大学設置・学校法人審議会(設置審)がきのう、認可するよう林芳正文科相に答申した。
 この学部新設を巡る「異常さ」は、設置審の審査の過程でも浮かび上がっている。
 教育課程のあり方などを巡って設置審は8件もの是正意見を指摘していたことが分かった。目安として5件以上は「警告」対象で、抜本的な計画の見直しが不可欠とされる特異なケースといえる。
 特に設置審が問題にしたのは、当初160人としていた定員の多さと高齢層に偏る教員配置だった。「円滑な指導は難しいのでは」「専任教員を補充し年齢構成のバランスを」と、何度も指摘し教育目標の実現性を疑問視した。
 答申段階でも「留意事項」が付いた。20人減って140人となった学生定員の厳格な管理、将来を見据えた教員の組織編成、補助金収納の報告について「適正に」とくぎを刺された形だ。
 学生数や教員体制は、学部経営の土台である。そもそも獣医師の将来的な需要の検証が十分だったのかについても疑問が残る。いくら高い教育目標を掲げても、いわば開設の入り口からつまずきの連続だった、極めてずさんな計画だったと言わざるを得ない。
 設置審の指示に沿って計画が修正され、どうにか基準を満たしたのだろう。だとしても国家戦略特区制度の事業者選定を巡る「加計ありき」の不透明な行政手続きは、何一つ解明されてはいない。
 答申を受け、国会は来週に衆院文部科学委員会を開くことで与野党が合意した。
 与党が衆院選の大勝と認可答申の既成事実を盾に幕引きに走ることは、絶対に許されない。特別国会で野党の質問時間削減を求めていることも見逃すことはできない。
 国民の不信は、ずっと積み残されたままである。同じような質疑のやりとりで時間の空費とならぬよう、政府、与党は野党の疑問・疑念にしっかりと丁寧に答えるべきだ。十分な質問時間が確保されることが必要だ。
 安倍晋三首相は、自らが関与していなかったとしても、言うまでもなく政府の最高責任者として疑念の解消に努める責務がある。その責任放棄は許されないことを肝に銘じてもらいたい。
 文科相は近く認可する。学園や今治市は来春の開学に向けて学生募集などの準備を急ぐことになろう。
 「疑惑の学園」のレッテルを貼られたままの開学では入学して来る1期生が、肩身の狭い思いをするだけだ。落ち着いた環境で学べる態勢が整うのかどうか。そのことは真相解明に向けた国会の論戦と無縁ではあるまい。