山形県内の各ワイナリーが、国が新たに定める表示基準への対応を急いでいる。
 原料の確保難といった理由で当面は地名を冠した商品名の変更を強いられるワイナリーも出てきそうだが、中長期的には人口減少や担い手の高齢化で脆弱(ぜいじゃく)になっている醸造用ブドウの生産基盤を立て直していく契機としたい。
 新たな表示基準は、日本のワインの評価が世界的に高まる中、海外原料を使用した「国内製造ワイン」と区別するため、国内で収穫されたブドウだけを原料として、国内で製造されたものに「日本ワイン」の呼称を与える。来年10月30日に完全施行される。
 「ご当地ワイン」の場合、地域内で収穫されたブドウが原料の85%以上を占め、なおかつ現地で醸造されたもの以外は、地名付きの商品名をラベルに表示できなくなる。
 東北で最も古い1892年創業の「酒井ワイナリー」(南陽市)をはじめ、山形県内には村山、置賜、庄内の各地域に東北最多の計14のワイナリーがあり、それぞれ特色のあるワインを製造、販売している。
 特徴的なのは、ワインどころとして名高い他の道県に比べても、原料に占める県内産の割合が高く、ほとんど外国産に依存していないことだ。新表示基準の導入に当たり、これは大きな強みになる。
 品種の偏りを是正しつつ、生産者が取り組みやすい増産策を工夫できれば、日本一のご当地ワイン集積地になることも夢ではなさそうだ。
 国税庁の調査によると、県内で製造されるワインは年間1361キロリットルで、このうち94%は国産原料のみを使用した「日本ワイン」に該当する。この割合は「十勝ワイン」「おたるワイン」などの「ご当地ワイン」がある北海道の86%を上回り、長野の79%、山梨の27%を引き離している。
 上山市のタケダワイナリーが、新基準に適合しないとして、販売終了を決めたロングセラー「蔵王スター」(1979年発売)は原料はほぼ県内産だが、「蔵王」と呼べる地域の解釈が問題になった。
 蔵王スターの白ワインは蔵王山麓に位置する上山市のデラウェア種を使っているものの、赤ワインの原料のマスカット・ベリーA種の主産地は天童市で、蔵王山麓とは呼べないと判断した。
 同社によると、販売終了の一方で、これを機に上山市でマスカット・ベリーA種を作ろうと言う農家が増え始めており、将来、蔵王スターを復活する可能性もあるという。
 昨年11月に国のワイン特区に認定された南陽市では本年度、耕作放棄地を醸造用ブドウの畑に再生させる取り組みも進められている。
 今後も伸長が確実視されている日本ワインの市場で、個性豊かな山形ワインが地歩を築くために、地域のブドウづくりを見つめ直すことが急務になっている。