これまでの会談後に見せた硬直した表情とは一変した、中国の習近平国家主席の笑みが、全てを象徴しているのではないか。
 安倍晋三首相が11日、アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に合わせて、習氏とベトナム・ダナンで会談した。両国関係の改善推進で一致するとともに、朝鮮半島の非核化に向けて連携を深めていく方針を確認した。
 きのうは、フィリピン・マニラで東南アジア諸国連合(ASEAN)関連の首脳会議に参加した中国の李克強首相とも会談した。
 東アジアの平和と安定化のためには、日中両国のトップが協調していくことが重要なのは言うまでもない。
 大国との外交という意味でも、米国、ロシアの首脳との親密な関係を築いていることを考えれば、中国と疎遠になっているいびつな現状は国益にそぐわないのは明らかだ。
 異例とも言える今回の一連の会談は、双方が目指す「戦略的互恵関係」の新たなスタートとして歓迎したい。
 今年は国交正常化45周年、来年は平和友好条約締結40年の節目の年でもある。日本が議長国を務める日中韓首脳会談の年内開催と共に、両首脳の相互訪問を実現し関係改善に弾みを付けてほしい。
 日本は核・ミサイル開発を進める北朝鮮の深刻な脅威にさらされている。問題解決には北朝鮮に大きな影響力を持つ中国の協力が不可欠だ。
 安倍首相は、北朝鮮に対して国際社会全体で最大限にまで圧力を強化すべきだ、との考えを習氏に伝え、建設的役割を果たすよう要請した。
 一方、習氏はトランプ大統領との米中首脳会談で、国連安全保障理事会の対北朝鮮制裁を厳格に履行する意向は示したものの、対話による解決にこだわった。
 日中首脳会談でも、この立場を崩していないとみられ、北朝鮮の脅威に対する危機感の温度差を埋めることはできなかったようだ。
 中国にとって経済的圧力はあくまで北朝鮮を話し合いのテーブルに戻すための手段であって、体制の崩壊までは望んでいない。多数の難民が押し寄せてくるからだ。
 トランプ氏と歩調を合わせた圧力一辺倒の安倍首相の強硬路線では、先に会談を行ったロシアのプーチン大統領を含めて、さらなる厳しい北朝鮮への包囲網形成が難しい現実を改めて浮き彫りにさせたとも言えよう。
 2期目の盤石な国内体制を固めた習氏は、外交面で柔軟な対応が可能になったはずだ。それを促すためには「封じ込め戦略」よりも、粘り強い対話が求められよう。
 日中間には、沖縄県の尖閣諸島を巡る対立や歴史認識問題、南シナ海進出問題など、喉元に刺さったトゲもある。安倍首相が主導権を取って信頼関係の構築を加速させ、ハードルを下げていくべきだ。