数字上は、国内景気の持続的な回復が裏付けられた形ではある。だが、そんな実感は持てない。日本経済の力がそこまで戻ったのかと問われれば、疑問と言うほかない。
 7~9月期の国内総生産(GDP)速報値が実質で前期比0.3%増、年率にして1.4%増となり、7四半期連続でプラス成長を記録したことについてである。
 16年ぶりのことだとはいうものの、好調な海外経済を背景に輸出が伸びて成長をけん引したことが大きい。外需頼みの構図はこれまでも、そしてこれからも続くとみられ、景気の自律的な回復には程遠いと言わざるを得ない。
 なぜなら、GDPの約6割を占める個人消費が低迷したままだからだ。
 前期(4~6月期)は0.8%伸びたのが、今期は0.5%のマイナス。天候不順の影響や、好調だった前期の反動があったと専門家は指摘する。だが、一進一退であるというそのことが、力強さに欠ける証しではないか。
 重要なのは賃上げだ。消費に回せる所得の向上である。
 衆院選に圧勝した安倍晋三首相は早速、経済財政諮問会議で「3%の賃上げ」を産業界に要請した。そのことを百も承知だからだろう。
 しかし、高い水準の賃上げが実現するのかどうかということ以上に問題なのは、本来は労使交渉で決まる賃上げに政府が5年連続で介入することであり、賃上げを「人為的」に実現しなければ、経済の好循環というサイクルを回せないことなのではないか。
 個人消費の拡大を軸とした自律的な景気回復に向け、その土台・環境を整える手だてが経済政策「アベノミクス」だったはずだ。だが取り組んで5年がたとうというのに、見せられるのは、自律回復とは懸け離れた現実である。
 賃上げとの絡みでは、アベノミクスの象徴・大規模金融緩和による円安状況が続く。世界的な景気回復という外的要因にその円安が重なり、企業業績は過去最高益の勢いで改善が進む。しかし社員に対する分配は少なく、積み上がるのは内部留保ばかり。もっと賃上げに回してほしい、と望むのは当然のことだ。
 だが、もうけ続けているのに、企業はなぜ賃上げや投資に慎重になるのか。同時に政府の介入でここ4年は毎年、2%前後の賃上げが実現しているのに、家計はなぜ消費を増やそうとしないのか。
 第4次安倍政権には、そうした視点から政策運営を練り直してもらいたい。
 企業は、新産業の創出を含め、そもそも国内市場の今後の成長に期待を抱けない。子育てや老後といった社会保障を巡る将来不安などから、家計は消費を増やせない。
 そうした現実があるのだとしたら、急務なのは企業・家計の不安を和らげるための産業構造改革であり、社会保障と税の改革なのではないか。