いったい、どうしたことか。日本経済の屋台骨を担ってきた「ものづくり」の現場に不正がはびこる。
 日産自動車とSUBARU(スバル)は、新車の出荷前に安全性を最終確認する完成検査を無資格の従業員にさせていた。日産では発覚後も無資格検査が続くなど不正が次々と明らかになった。
 神戸製鋼所の製品データ改ざんは、現場の管理職らが不正を報告せずに隠蔽(いんぺい)していたことが判明し、一部の銅製品で日本工業規格(JIS)の認証が取り消された。
 ものづくりニッポンの真骨頂は言うまでもなく「信用」だ。それは、厳密な生産工程と誠実な職人の仕事が積み重ねてきた伝統にほかならない。品質を軽んじる企業体質は、その前提が崩れつつあることを浮き彫りにした。
 日産、スバルの無資格検査は30年以上続いていたという。神戸製鋼はデータ改ざんが約10年前に始まったと説明するが、かなり以前から行われていた可能性もある。
 この時期は、バブル崩壊後の「失われた20年」とちょうど重なる。2010年には日本と中国の名目国内総生産(GDP)が逆転。日本は世界3位に後退した。経済の低迷と連動するように不正の病巣が広がったように映る。
 経営者の姿勢にも疑問符が付く。日産は今回、販売台数目標を示す新中期計画の具体化を見送った。高い数値目標を掲げて達成を公約するカルロス・ゴーン会長の経営手法が修正を迫られている。
 経営危機から再建を果たした「ゴーン改革」は国内工場閉鎖や人員削減の痛みを伴った。コスト削減を優先し、現場に十分な人員を配置しないことがしわ寄せとなり、無資格検査の原因となったとの見方は強い。そのゴーン氏は問題発覚以降、全く姿を見せていない。消費者の不信は深まるばかりではないか。
 バブル後、ものづくり現場を取り巻く環境は激変した。終身雇用や年功序列といった雇用慣行は崩れ、デフレの長期化で低賃金の非正規雇用者も拡大。技能継承や人材育成が滞り、世界をリードした技術はアジア勢に押された。
 競争やコスト削減ばかりに目を奪われ、消費者への責任が希薄になったことが不正につながったようにも映る。
 神戸製鋼のデータ改ざんは世界への不信拡大が懸念される。米航空機大手ボーイングをはじめとする海外メーカーや米司法省が調査に乗り出している。欧州連合(EU)の欧州航空安全庁も調達を控えるよう勧告した。
 製造現場では、この数年だけでも免震ゴムやくい打ち工事のデータ改ざん、自動車の燃費不正などが相次いだ。企業ガバナンスのモラル低下は深刻な危機と言える。
 生産ラインの先には大勢の消費者がいる。まずはものづくりの原点をかみしめ、信頼回復に取り組むべきだ。