角界がまたも暴行事件で揺れている。現役横綱が本場所中、警察に事情聴取されるという前代未聞の事態である。
 大相撲の横綱日馬富士関が10月下旬の秋巡業中、モンゴル出身力士らが集まる鳥取市内での酒席で、平幕貴ノ岩関を殴りけがを負わせた疑いが持たれている。横綱は鳥取県警の任意の聴取に対し暴行を認めている。
 貴ノ岩関が生活態度を注意されていた際、着信があったスマートフォンを操作しようとしたことに激怒し、殴ったという。どのような事情があろうと、全力士の手本となるべき最高位の横綱が、暴力で後輩力士をねじ伏せようとしたのはもってのほかだ。
 日馬富士関は先場所、3横綱が休場する中、一人横綱として奮闘。9回目の優勝を果たし、面目を保った。さらに精進して土俵の内外で範を示すのが本来の務めであろう。厳しい処分は免れまい。
 ただ、事態を重視せずすぐに対応しなかった日本相撲協会の責任も重い。警察からの連絡で今月2日には事件を把握していたにもかかわらず、報道で問題が発覚する14日まで放置していた。
 世論に押されるようにして2週間以上たった19日に、ようやく日馬富士関から事情を聴く始末だ。あまりにも危機意識がなさ過ぎる。
 角界はここ十年来、部屋ぐるみの暴行死事件や、元横綱朝青龍関による知人への暴力事件、八百長問題など数々の不祥事を繰り返してきた。
 その反省を糧にしながら、根深い暴力体質やぬるま湯的組織からの脱却を進めてきたはずだったが、一向に改まっていないのではないか。
 事件を巡っては、協会で巡業部長を務める、貴ノ岩関の師匠、貴乃花親方(元横綱)の動向が焦点の一つになっている。暴行から3日後には県警に被害届を出したが、協会への報告を怠っていた。その後に協会側から事情を聴かれた際には「よく分からない」と答えたという。
 大事なまな弟子の体を心配するあまりのことなのだろうか。自らの職責を果たさなかったばかりか、協会側に盾突いているようにも映る。日馬富士関側に対し、民事訴訟など法的手段を検討する意向も漏らしている。
 親方は言動の意図を一切明らかにしていない。力士同士のトラブルが協会の内輪もめにつながり、何か別の思惑絡みで独り歩きしているのだとしたら、由々しきことだ。
 警察の捜査と並行して、協会は自助努力で事件の解明を進め、事態の早期収拾に向け全力を挙げるべきだろう。
 九州場所は連日、満員御礼が続いている。今年は21年ぶりに6場所90日間全てで「大入り」を達成する見込み。
 ファンにとっては「土俵の充実」が全てだ。相撲人気を続けていくためにも、協会は一から出直す覚悟で体質改善に取り組んでほしい。