東日本大震災の体験と教訓を生かすべき対象は、足元の地域や国内だけではない。世界には私たちとの連携に期待する多くの人たちがいる。
 25~28日に仙台市で初めて開かれる世界防災フォーラム(WBF)は、震災被災地の防災発信の責務を改めて確認する機会になるだろう。
 WBFは、2015年3月に仙台市で開催された第3回国連防災世界会議の成果を引き継ぐ定例の国際会議として企画された。スイス・ダボス市開催の国際災害・リスク会議(IDRC)と連携し、交互に隔年で開催される。
 東北大や仙台市、宮城県などが実行委員会を組織して準備を進め、初回はアジアを中心に40以上の国・地域から政府幹部や専門家、NGO、メディアなどの関係者900人以上が参加する見込みだ。
 震災から6年8カ月が経過し、風化の懸念が足元でもさらに強まる中、被災地に定期的に世界の防災関係者が集う機会ができた意義は大きい。
 国際会議の実績を積み重ね、被災地を含む宮城、東北のインバウンド(訪日外国人旅行者)需要拡大のリード役を目指す仙台市の観光戦略上も重要な位置付けになる。
 国連会議では30年までの世界の防災指針として「仙台防災枠組」が採択された。災害による死亡率や経済損失の大幅削減など七つの目標に向け、各国に一層の投資や教育・啓発の連携を促す内容だ。
 国際協力機構のまとめによると、この半世紀の間に世界では約280万人の命が奪われ、被害総額は約7300億ドル(約95兆円)に上る。目指す「持続可能な発展」にとって災害リスクは最大の懸念であり、特に災害被害の9割が集中するアジアにおいて、近隣の「防災先進国」日本の復興過程も含めた知見と技術の展開が必要とされている。
 WBFは英語表記にあえて「BOSAI」を使用し、知見共有の姿勢を前面に打ち出した。女性や障害者、コミュニティーの重視、ビルド・バック・ベター(被災前より災害に強い復興)の推進など震災で確認された視点の掘り下げをはじめ、事前の対策で犠牲や被害の軽減を図る実践的な防災策の集約を目指す。
 基本的に専門家や関係者向けの議論にはなるが、市民公開のセッションや気軽に参加できる催しも用意された。会場の仙台国際センター周辺では前日祭のほか内閣府など主催の防災推進国民大会、防災産業展も同時開催される。
 催しの集中開催は相乗効果が期待できる一方、メニューの盛り込みすぎによる消化不良の懸念もある。防災を閉じた世界の議論にとどめないために構えた積極的な仕掛けと捉えるならば、産学官民の協働と多くの市民の参加による盛り上げこそが鍵になる。
 震災と被災地を世界の防災連携の起点とする機運を高める一歩として、新しい国際会議を息長く育てたい。