北朝鮮の弾道ミサイルに対抗するための新規装備となる地上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」。政府は12月にも導入について閣議決定する方向だという。
 日本列島全体をカバーするため東西に1基ずつ計2カ所に配備する計画だ。候補地として、秋田市の陸上自衛隊新屋演習場と山口県萩市の陸自むつみ演習場に絞り込んだ。
 イージス・アショアについては、国会で突っ込んだ議論がなされていない。既に現地調査が実施されるなど、国民に知らされない形で候補地選びが先行して進められていることに違和感を覚える。
 「不安をあおり、物事がどんどん決められていく。配備は米国の盾になるだけではないか」-。秋田県民からこうした不安や戸惑いの声が上がり、配備反対の署名活動が起きるのも当然のことだ。
 イージス・アショアは、イージス艦に搭載している迎撃ミサイルシステムを陸上用に転用した。新型ミサイル「SM3ブロック2A」で撃ち落とす。1基当たり約800億円。米国から購入する。
 米軍は2015年にルーマニアに、18年にはポーランドに配備する予定になっており、日本は3例目となる。政府は18年度当初予算に設計費を盛り込む意向だという。
 導入のメリットは何か。政府は弾道ミサイルへの対処能力向上と共に、24時間態勢で日本海で警戒監視に当たるイージス艦の負担軽減につながる、とアピールしている。
 ただ、固定式ゆえのデメリットもある。有事となれば、真っ先に攻撃目標にされる危険性をはらむ。強力な探知レーダーを備えているため、電波障害が周辺地域に及ぶ恐れも否定できない。
 政府はこうした点について、配備先となる周辺地域の住民に対して丁寧に説明した上で、理解と協力を得ることが求められる。ロシアをはじめとする周辺国の脅威論に対する配慮も必要ではないか。
 北朝鮮の弾道ミサイルは予測を上回るスピードで開発が進んでいるが、イージス・アショアの実戦能力は未知数と言っていい。北朝鮮の「進化」に対処できるかどうか不明のまま、なし崩し的に導入が図られようとしている。
 実際、米各紙は先の日米首脳会談の際の報道で、安倍晋三首相が北朝鮮情勢を理由に米国製兵器を売り込む「武器商人」のトランプ米大統領の要求に応じた、などと解説している。
 専用部隊養成などの運用コストや基地防衛費で最終的に数千億円に膨らむ可能性があるとの指摘もあり、日本にとって有用な装備なのかどうか、改めて吟味が必要だ。
 小野寺五典防衛相は来年1月、米ハワイにある実験施設の視察を検討しているという。費用対効果の厳密な検証を行ってからでも、導入決定は遅くない。国会で一からの必要性の議論も不可欠だ。