仙台市は石炭火力発電所の立地抑制を目的にした全国初の「指導方針」を策定、きょう施行する。相次ぐ進出で、市民に大気汚染など環境への不安が高まっているためだ。
 市内への新・増設の計画を把握した段階で、事業者に進出自粛を強く要請するのが柱。受け入れられない場合は、環境影響評価(アセスメント)の前段として、複数の計画案による環境影響の予測などを求めるという。
 市は5月に条例の施行規則を改め全国で初めて、国が定めた石炭火発の環境アセス実施基準(出力規模11万2500キロワット)にかかわらず、全計画をアセスの対象とした。規制は一段と強まることになる。
 「方針」には条例のような拘束力はない。しかし、二酸化炭素を多量に排出する発電所について自治体が「歓迎しない」というメッセージを発信する意味は大きい。
 健康被害や環境悪化から住民を守る「低炭素社会」の構築に向け、都市づくりの姿勢を明確に示すものだ。
 東北への石炭火発の新設計画は東日本大震災以降、集中した。2016年の電力小売り全面自由化を追い風に、新規参入業者らによる計画は十数基に上っている。地域の電力需要は高まっていない。目的は主に首都圏への売電。港湾や送電網が整い建設コストも低い東北に狙いを定めた。
 結果として、環境悪化の不安だけが地元に降り掛かるのでは割に合わない。国や業界はこうしたいびつな構造を真剣に捉え直してほしい。
 環境アセスを巡っては、国のアセス実施基準をわずかに下回る発電出力での申請が事業者間で常態化していた。着工を急ぐための「アセス逃れ」で、地元自治体との協調を欠く不誠実な対応といえる。
 仙台市では14年以降、仙台港周辺で2基の計画が進行。うち1基がアセスを実施しないまま今年10月に営業運転を始めた。このケースを教訓に条例施行規則は改められた。
 市環境共生課は「環境保全の観点から、市としてできることを行い、事業者に協力を求めていく。これ以上の進出は食い止めたい」と言う。一連の対応は自治体が取り組める最大限の対抗策であろう。
 コストが安く安定的な発電が見込める石炭火発は国のべースロード電源の一つとされる。半面、世界の多くの先進国が脱石炭にかじを切る中、流れに反する日本が批判を浴びているのも事実だ。
 こうした世界の動きも踏まえ、仙台市は6月に奥山恵美子前市長が政府に「国が示した温室効果ガス排出量の削減目標との整合性が確保されていない」などと、新設計画に歯止めを掛けるよう訴えた。
 地球温暖化対策の主役は、国から自治体に移りつつあるとの見方もある。同市の指導方針が、住民のリスクを取り除き、新しいエネルギー社会へ進むための一石になるのか注目したい。