目的に異論はない。だが実際の取り組みが円滑に進むのかどうか、課題は山積みだ。どれほどの事業規模を想定しているかも定かではない。
 それなのに、負担の議論だけが先走る。既に同様の目的の税があり、この新税には「二重課税」の懸念もある。これで国民の理解が得られるのかどうか。確たる事業構想と丁寧な説明が欠かせない。
 政府、与党が導入方針を決めた「森林環境税」のことである。導入時期は2024年度が基本線。与党内には前倒しを望む声もある。
 日本は国土の3分の2が森林で、うち4割に当たる1千万ヘクタールがスギやヒノキといった人工林。多くが伐採期を迎えながら、木材価格の低迷などから利用されず荒廃が進む。
 そんな私有林再生のため、林野庁は「森林バンク」制度をつくるという。管理を所有者から市町村がいったん引き受け、意欲のある林業経営者に貸し出す仕組み。その財源をこの新税で賄う。間伐や林道整備の費用にも充てる。
 森林整備が目的だ。林業を再生しつつ地球温暖化防止、山崩れや洪水といった災害防止、水源かん養など、森林の持つ多面的機能を維持することは国民の利益でもある。
 国民皆で森林を支えるため、約6千万人が対象の個人住民税に上乗せする形で税を徴収し、国が全額を森林面積などに応じて、現場に身近な市町村に主に配分する方向だ。上乗せ額は千円が有力で、総額は約600億円になる。
 だが実際には課題が多い。大きな壁は所有者不明の林地が全体の30%近くに上るとみられることだ。所有者から管理を引き受けることが困難で林地の境界が画定できず、担い手へ森林集積も進むまい。
 林業の専門職員が少ない市町村でどこまで対応できるのか、意欲的な担い手がどれほど確保できるのかも疑問だ。巨額の財源がどう使われるのかが見えてこない。これでは無駄遣いの恐れさえある。
 所有者不明の森林を簡素な手続きで利活用できるようにする。職員、担い手を確保し育成する。そんな仕組み・環境の整備が必要だ。こうしたことも含めた事業の全体像をしっかり固めて示すべきだ。
 納税者として看過できないのは二重課税の問題である。宮城の「みやぎ環境税」のように青森を除く東北5県を含む37府県と横浜市が森林や水源の保全をうたい、既に年300~1200円を住民税に独自に上乗せしている。
 例えば、成果が上がっている県の納税者は新税導入をたやすく容認できまい。後発の国が先発の自治体と調整し、税の役割分担・すみわけを明確にしなければならない。
 そもそも、国が想定する森林整備が既存予算の組み替えで対応できないのかという疑問もある。森林が担う重要な機能維持のため、どうしても新税が必要だというなら、納得できる説明が不可欠だ。