極めて厄介な「核のごみ」の問題に、国や電力会社は真剣に向き合うつもりがあるのだろうか。本気度を疑われても当然の不祥事だった。
 原発から出る高レベル放射性廃棄物最終処分について国などが一般の人に説明する場で、謝礼を持ち掛けて大学生らを動員していたことが明らかになった。
 原子力を巡ってはこれまでも、住民説明会などに電力会社が組織的に動員していたことが批判された。いまだにあしき体質に染まっていたのでは、どれほど原子力への理解を求めても無駄だろう。
 お仕着せの説明会を開いても、不信感を抱かれるばかりだ。動員に伴う謝礼などは実際には支払わなかったというが、渡したケースは本当になかったのだろうか。改めてしっかりと調査し、経緯を含めて公表すべきだ。
 問題になったのは、全国各地で開かれている住民との意見交換会。高レベル放射性廃棄物は最終的に「地層処分」(地下埋設)される予定で、候補地選びまでの手続きなどを説明した上、一般市民の意見を聞くのが目的だった。
 電力各社が中心になって設立した原子力発電環境整備機構と経済産業省が、10月に始めた。11月には盛岡市と秋田市でも開かれている。
 そのうち11月6日のさいたま市では、1人1万円を約束して大学生と高校生合わせて12人を動員していた。
 愛知、兵庫などの4都府県でも、1人5千円相当の約束で計27人を動員している。
 信じ難いことだが、国が深く関わる原子力政策の意見交換会で、金銭を約束して参加者を集めたことになる。機構によると、広報を委託した広告会社からさらに委託された東京のマーケティング企画会社の独断だったという。
 仮にそうだとしても、国や機構の責任は免れない。そもそも、委託する性格の事業ではないはず。最終処分は、国が主体的に取り組まなければ到底解決できない。委託自体が怠慢であり、本気で解決を目指しているのかどうか疑われるだろう。
 原発の使用済み核燃料の処理方法として、日本はプルトニウムを取り出す「再処理」を選んだ。再処理後に残る廃液(高レベル放射性廃棄物)はかなり強い放射線を出すため、ガラスと共に固めて地下深くに埋設される見通しになっている。
 これが「核のごみの最終処分」であり、経産省はことし7月、処分場の候補地になり得る地域を示した「科学的特性マップ」を公表した。公表をきっかけに意見交換会が開催されたが、早々とつまずく結果になってしまった。
 金銭を約束して動員したことが発覚した以上、今後の意見交換会の日程は白紙に戻すべきだ。なぜこんな事態になったのか、包み隠さず明らかにして出直さなければ、開催する資格はない。