「不当な差別的な言動を許さない」という揺るぎのない意思の表れだろう。
 川崎市が、市立公園や公民館などの公的施設でヘイトスピーチ(憎悪表現)の恐れがある場合に、利用を制限する全国初のガイドラインを策定した。来年3月末からの施行を予定しているという。
 同市では排外的なデモなどが繰り返されてきており、昨年5月には市の独自の判断で、特定団体の公園使用を初めて不許可処分にした。今後も同様の事態が予想されることから、今回、事前規制による抑止に踏み切ったことは少なからず意義がある。
 ただ、憲法が保障する表現の自由をむやみに制約してはならないのは当然のこと。手探りの面もあろうが、実績を積み重ねていく中で両立の課題を解決していくべきだ。
 利用の制限としては、ヘイトスピーチの恐れが「客観的事実に照らして具体的に認められる場合」に警告、条件付き許可、不許可、許可の取り消しにできる、と定めた。
 とりわけ不許可と許可取り消しについては、他の利用者に著しく迷惑を及ぼす危険が明白な場合などに限定した。
 不許可などに至る判断に、公平性、透明性が担保されなければならないのは言うまでもない。専門家による客観的な視点が不可欠だ。市が設置する第三者機関に事前に意見を求めるように、一定の歯止めをかけた点は評価できる。
 ヘイトスピーチをどう定義するのか。理念法として昨年6月に施行された「ヘイトスピーチ対策法」に基づき、差別的意識を助長し、または誘発する目的を有する-ことなど4要件を挙げている。
 それでも抽象的な内容であるのは否めない。何らかの物差しが必要ではないか。対策法の基本的な解釈をまとめ、許されない具体例を示した法務省の見解が参考になろう。
 具体的には「○○人は殺せ」といった脅迫的言動や、ゴキブリなどの昆虫や動物に例える著しい侮辱、「町から出て行け」などの排除をあおる文言が当てはまる、と指摘している。
 最近、こうした差別的な表現が目立つのは、インターネットへの投稿や書き込みだ。
 法務省によると、昨年1年間のネット上の人権侵犯は調査を始めた2001年以降、過去最悪の1909件(前年比10%増)に増えている。
 今後、どう対応していくのか、サイト運営者を交えたルールづくりが急務だ。
 ガイドラインという規制の手だてができたのは前進と言えるが、直ちにヘイトスピーチが根絶するわけではないのも確かだろう。
 少子高齢化が急速に進む日本社会を見れば、労働力としてこれから外国人が増えることがあっても減ることはあり得ない。東北も例外であるまい。コミュニティーが多様性を拒否するのではなく、尊重することが求められる。