四国電力伊方原発(愛媛県)の3号機を巡って、広島高裁がきのう、火山の噴火による影響を理由に運転を差し止める決定を行った。
 これまで原発の運転差し止めは地裁の判決や仮処分決定で認められたケースはあったものの、上級審の高裁では初の差し止め判断。全国の高裁はこれまで「行政追認」が目立ち、地裁判断を覆してきたが、福島第1原発事故後の新規制基準を厳格に適用して、差し止めの結論を導いた。
 過酷な原発事故に見舞われた以上、司法も事故以前のように漫然と国などの言い分を認めることはできないはず。安全性の実質を可能な限り追い求める責任は極めて重くなっている。
 伊方3号機については、広島県の住民らが運転差し止めの仮処分を申し立てた。広島地裁はことし3月に却下。住民側は広島高裁に即時抗告していた。
 争点になったのは津波や噴火の影響。地裁は「原子力規制委員会の判断に不合理な点はない」と追認したのに対して、高裁は一転、九州の阿蘇カルデラの噴火による影響を指摘して差し止めを認めた。
 伊方原発は九州に近い四国の西端にあり、阿蘇までの距離は約130キロ。今回の決定によると、新規制基準では原発から160キロ以内の火山を対象に、3段構えで影響を評価しなければならない。
 まず、原発の稼働期間(約40年)で火山活動の可能性を見積もる。十分小さいと判断できない場合は噴火規模を推定する。それも不可能なら過去最大の噴火を想定し、火砕流が到達する可能性が十分小さくなければ、立地は認められない。
 阿蘇は約9万年前に起きた巨大噴火を想定することになり、そのケースだと「火砕流が伊方に到達する可能性は、十分小さいと評価できない」と判断された。
 四国電力にとっては厳しい想定かもしれないが、広島地裁は「『限定解釈』をして、判断基準の枠組みを変更」したというのが高裁の立場。結局、新規制基準適合という原子力規制委員会の判断は不合理と結論づけた。
 原発と自然災害との関わりは、さまざまな議論があるだろう。どこまでの規模を想定するかが焦点になるが、こと原子力に対しては、考え得る限り最大の災害にも備えるという発想が不可欠。重大な原発事故は、とてつもない影響を及ぼすからだ。
 福島の事故後、原子力に厳しい見方を示す司法判断が目立ち始め、関西電力の大飯、高浜両原発(いずれも福井県)でも、地裁で差し止め判決などが出されている。
 「高裁の壁」は厚く、差し止めが確定したケースはまだない。ただ、法律や基準を厳密に評価するのは、司法の最低限の役割。安全性の確かな手応えのためには、さらに深く追究する姿勢が必要だ。