多様な働き方に対応した税制に変えるのだと強調しながら、広く「痛み」を求める道は避け「取りやすいところから取る」という、その姿勢には何ら変わりがない。これで「改革」と言えるのか。
 自民、公明両党がきのう決めた2018年度税制改正大綱の柱、所得税改革のことである。税負担を軽くするため収入から一定額を差し引く仕組み、控除を今回も見直す。
 中心となるのは、会社員が対象の「給与所得控除」を縮小する一方、職種を問わず受けられる「基礎控除」を拡大すること。働き方の違いによる不公平と、所得格差を是正するのが目的だという。
 これで、「会社員より税負担が重い」という自営業者や組織に属さずフリーで働く人たちが、基礎控除の拡大分だけ減税されることになる。
 会社員は年収850万円で線引きされる。それ以下は納税額が変わらないのに対し、それを超える会社員は二つの控除の合計額が現行より減るため、増税になるという。
 格差縮小へ会社員に手厚い給与控除を改め、基礎控除を拡充していくという改革の方向性について理解はできる。
 ただ見逃せないのは、ここ数年の控除改革で負担増が続く高収入の会社員、つまり「取りやすいところ」にまた負担が押し付けられることだ。
 しかも、改革の前後で税収が変わらない税収中立が税制改正の原則なのに、今回は900億円もの純増税となる。その増収分は、19年10月の消費税増税時の軽減税率導入に伴う減収分の穴埋めに充てられる可能性があるという。
 もしそうなら、何のための改革なのか。丁寧な説明が必要だ。それなくして、増税される層を含め、広く国民の理解を得ることはできまい。
 17年度の税制大綱は今後、数年かけて控除制度の抜本見直しに取り組むとうたった。その主眼は格差是正にある。
 焦点の一つが、基本的な計算方式の変更。高所得層の減税額が大きくなる現行方式を見直し、所得を問わず減税額が一定になり、低所得層が恩恵を受ける「税額控除方式」に切り替えることだった。
 だが、その抜本改革は見送られた。増税層がぐっと広がり、政権の不人気につながりかねないとみたからだ。
 言うまでもなく、格差是正は待ったなしの課題である。
 控除に加え、株の譲渡益や配当、利子などが一定税率で分離課税される方式も見直したい。株高などによる「不労所得」の税率が年収850万円前後と同じ20%で妥当なのかどうか。税額控除方式導入と併せ、所得税の抜本改革に向け骨太の議論をすべきだ。
 必要なのは、税の再配分機能を高めることだ。改革には「痛み」が伴う。その痛みについて国民の理解をどう得るか。丁寧な議論と説明を重ねる努力なしに、格差是正は実現しない。そのことを政府、与党は肝に銘じてほしい。