年末年始にかけても、日本海沿岸に流れ着くのだろうか。北朝鮮からとみられる木造の漂流・漂着船が、東北や北海道で相次いでいる。
 海難とはいえ、この国は核実験やミサイル発射を繰り返し、今まさに世界をどう喝している危機の元凶である。それを考えれば、安穏として見過ごせる事態ではない。
 北海道東北地方知事会(会長・高橋はるみ北海道知事)はきのう、領土・領海の警備強化を求めて石井啓一国土交通相に要請書を提出した。沿岸住民の不安を思えば、当然のことだ。
 海上保安庁の調べでは、今年に入って見つかった漂流・漂着船は計89件(15日現在)。統計を取り始めた2013年以降、最多となった。
 大半は小型の老朽漁船で工作船の可能性は低いという。遠海で荒天に遭い難破。潮流に乗り青森、秋田、山形各県などの浜に行き着いたとされる。乗組員が船内で死亡していたケースも少なくなく、25人の遺体が確認されている。
 海保や警察は、住民に被害が及ばないよう万全を期してほしい。
 現に北海道沖の無人島では、島にあった発電機を盗んだ容疑で乗組員3人が逮捕された。11月半ばから10人が滞在していたとみられ、避難小屋が荒らされ多くの生活用品がなくなっている。
 北朝鮮籍の漁船の多くが夏ごろから日本の排他的経済水域(EEZ)内まで入り込んでいたことも分かっている。「大和堆(やまとたい)」というイカなどの漁場が狙いで、海保による放水警備にもひるまず、わが物顔で違法操業を繰り返した。
 ただ、漂着が急増したのは11月以降だ。朝鮮労働党が外貨稼ぎの国策として「冬季漁獲戦闘」と銘打った集中出漁を奨励したとされる。
 まともな装備もない小さな船で荒れる冬の海に乗り出し、無謀な漁をしていたとすれば自殺行為だ。
 救助の手も届かず、遺体で見つかった身元不明者の多くは火葬された。故国で家族が帰還を待っているのではないか。ふびんとしか言えない。
 貧しい漁民の命と引き換えにしてまで、厳しいノルマを課して国家の体制維持を優先させる北朝鮮の強権支配が、はっきりとうかがえる。
 日本側の痛手も大きい。違法操業の影響で不漁を強いられた漁業者らは、誰にも補償してもらえない。
 さらに漂着船の撤去・解体経費や遺体の火葬費用、上陸させた生存者の対応に要するコストなどは、各自治体が予算捻出に苦慮している。
 降って湧いた国際的トラブルの尻拭いを地元にさせるわけにはいくまい。国が責任を持って対応すべきだ。
 政府には沿岸警備の強化はもちろん、EEZ内で日本側の権益を守るための徹底的な取り締まりが求められる。国民の切実な声に耳を傾けてほしい。