建設業界は「悪弊」をまだ断ち切れないでいるのか。総工費9兆円を超える巨大プロジェクトが、業界ぐるみの不正の温床になっていた疑惑が浮かび上がった。
 JR東海が発注したリニア中央新幹線の建設工事を巡る独禁法違反事件である。
 大手ゼネコンの大林組が、東京地検特捜部の事情聴取に対し鹿島、清水建設、大成建設との4社による受注調整を認めた。公正取引委員会にも違反を申告していたという。
 民間の事業とはいえ、リニア計画には財政投融資3兆円が投入されており、公共事業と同じ重みがあると言っていい。談合で事業費が膨らめば利用者に運賃の形でしわ寄せが及びかねない。司直の手で全容を徹底解明してほしい。
 JR東海がこれまでに締結した工事は22件。このうち4社が代表となる共同企業体(JV)が15件受注し、各社は3~4件とほぼ均等だった。4社の担当者らは業界の会合などを通じ定期的に会い、情報交換していたという。
 特捜部は当初、大林組のJVが受注した名古屋市の非常口工事で不正な入札があったとみて偽計業務妨害容疑で同社の強制捜査に踏み切った。
 今月8~9日の家宅捜索後、大林組から公取委に「4社で事前に受注調整した」と、課徴金減免制度に基づく申告があった。もはや他の3社は「談合には当たらない」といった言い逃れができなくなったはずだ。
 制度は談合の課徴金の増額と共に、2006年の法改正で設けられた事実上の司法取引だ。独禁法違反容疑で調査を受ける前に関与を認めれば課徴金が減免される。他社より早い申告なら刑事告発も免れることができる。
 各社は1990年代のゼネコン汚職事件の反省を踏まえ、05年に「談合決別宣言」をしたはずだった。にもかかわらず、その後も談合が繰り返されているのは問題だ。
 宣言直後の06年には、旧防衛施設庁発注工事に絡む官製談合事件で大手ゼネコンを含む多数の業者が摘発を受けた。今年4月には、東日本大震災の被災農地復旧事業を巡る談合疑惑で、大手の東北支店などが公取委から立ち入り検査を受けている。
 リニア計画には難易度の高い工事が多い。「技術力と体力のある会社が受注しただけ」という声を聞くと、おごりや甘えの体質があったと言わざるを得ない。
 これまでの捜査で、JR東海側が工事価格に関わる非公開情報を伝えた疑いも指摘されている。発注者側にも重大な責任がある。説明を尽くすべきだ。
 独禁法は、発注者が官か民かを問わず公正な競争を妨げることを禁じている。談合は公平な入札制度の根幹を揺るがす悪質な犯罪である。
 新時代を切り開くリニア中央新幹線に、汚点を残してはならない。