日本の基幹産業、自動車製造の行方は大丈夫なのか。官民そろって後手に回りつつあるのではないか。そんな懸念が拭えない。世界でことし急加速の様相を見せている電気自動車(EV)を巡る動きである。
 とりわけ、世界最大の自動車市場である中国の決定は大きなインパクトを与えた。
 深刻な大気汚染に悩む中国政府は9月、EVをはじめとした新エネルギー車の一定割合以上の生産、輸入を義務付ける規制の2019年導入を決めた。新エネ車の対象には燃料電池車(FC)なども含まれるが、日本勢得意のハイブリッド車は除かれる。
 中国に先んじたのは英国とフランスだった。7月にガソリン車とディーゼル車の廃止へ向けた検討を表明。前後して全車種を19年以降、EVなどにする方針を打ち出したスウェーデンのボルボ・カーは「内燃機関だけで走る車の終焉(しゅうえん)を告げる」と宣言した。
 ドイツのフォルクスワーゲンやダイムラー、米のゼネラル・モーターズ…。欧米勢は雪崩を打つように、電動化モデル投入やそれに伴う巨額投資を相次いで発表している。
 背景には電池性能の向上でコスト高のEVの弱点が克服されつつあることに加えて、世界各国の排ガス規制が厳しさを増している現状がある。
 政府が人々の意識の変化や技術の進展を捉え、踏み込んだ環境規制を打ち出し、民間も呼応する図式だ。
 英財務相は11月下旬、18年度政府予算案で、EV充電拠点整備の基金創設や購入者への助成金など、資金の重点配分を発表した。翻って日本では、企業の競争力向上を図る主な論点は法人税の見直し。他国が大胆な方針転換と、実現への具体的な施策を打ち出す中で物足りなく映る。
 中国が車の環境規制強化にかじを切ったのは、次世代車の生産で自国が主導権を握る狙いもある。
 中国メーカーは既に多くのEVを販売しているのに、日本勢でEVを投入しているのは現時点で日産自動車だけ。商品化が遅れるトヨタ自動車は、パナソニックと車搭載用のEV電池事業での提携検討で合意。20年代前半に世界で10車種を販売するという。日本のものづくりが世界の潮流に乗り遅れないか心配だ。
 車がEVに置き換われば、エンジンなどの部品がなくなって部品点数は大幅に減る。雇用にも悪影響を及ぼそうが、日本が手をこまねいていれば市場を奪われる。
 一方で東南アジアなどでは低燃費ガソリン車のニーズは依然あり、FCなど他方式が優位に立つ可能性もある。
 とはいえ、業界が「環境」をキーワードにした「100年に一度」の大変革の真っただ中にいることは確か。官民とも強い危機感が必要だ。産業の集積が進む東北の関連企業・機関も変化に即応できる態勢づくりが求められよう。