公文書をどう保存し、国民の「知る権利」に応えるか。政府に課された責務が一向に果たされていない。
 「森友・加計(かけ)学園問題」であらわになった官庁の公文書管理のずさんさは国益を損ねかねない段階にまで来ている。対策を急がねばならない。
 政府の諮問機関、公文書管理委員会は20日、文書作成・保存のルールとなる新ガイドライン(指針)の最終案を了承した。「1年未満で廃棄できる文書」の限定などが柱で、政府は年内に決定する。
 一方、立憲民主、希望、共産、自由、社民、「無所属の会」の野党6党派は「法改正で対応すべきだ」として、保存文書の定義の見直しなども含め公文書管理法の改正案を先の特別国会に共同提出した。
 年明けの通常国会で真摯(しんし)な議論を尽くしてほしい。
 森友学園への国有地売却を巡る問題では、会計検査院が調査した際、必要な文書が残されていないため価格の妥当性の検証ができなかった。
 財務省が学園との交渉記録などを「1年未満」に分類していたためだ。このことが「不透明な土地取引」だとして国民に疑念を持たれる発端になった。
 肝心なのは、保存文書の範囲や期間が恣意(しい)的に決められないようにすることだろう。
 新指針案は、行政の意思決定過程を検証するのに必要な重要文書の保存期間を「原則1年以上」と定めている。
 「1年未満」の保存も認めるが、対象は「定型的な業務連絡」「正本・原本の写し」など7項目に限定した。場当たり的な廃棄を防ぐ上で一定の歯止めにはなろう。
 ただ、線引きの判断は各省庁に任される。職員が指針を都合よく運用し、情報が遠ざけられる懸念は残る。外部のチェック機能が不可欠だ。
 これに対し、野党案は保存対象を「国の職員が職務上作成した文書」と現行法より幅広く捉えた。「個人メモ」なども含まれることになる。その上で、期間を「1年以上」に義務化。新指針案より厳格な枠組みを整えた。
 野党側は「(新指針案は)言い逃れの根拠をつくるだけ」と指摘している。
 例えば、省庁間のやりとりや外部との打ち合わせを文書に残す場合、新指針案では「正確性を期すため」として相手方に発言内容を確認することを盛り込んでいる。
 正確性の基準をどこに置くのか不明だ。認識のずれが事前に調整され都合の悪い記録が残されなくなれば、かえって真実が遠のく恐れがある。
 加計学園問題で発言があったかどうか省庁間で食い違った「総理のご意向」文書が、これに当たるのではないか。抜け道を許してはなるまい。
 管理法は「公文書は民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源」と規定する。将来の国民の検証に応える責任を負っていることを重く捉える必要があろう。