丁寧な意見集約をアピールする狙いがあるのだろうが、まだまだ議論が熟していない証左でもある。
 自民党の憲法改正推進本部(細田博之本部長)が改憲4項目に関する中間的な総括に当たる「論点取りまとめ」を公表した。焦点の9条については両論併記となった。
 一つは戦争放棄の1項、戦力不保持などを定めた2項を維持し自衛隊を明記する安倍晋三首相(党総裁)の意向に沿った案。もう一つは「国防軍」創設を盛り込んだ2012年党改憲草案をベースに2項を削除する案だ。
 推進本部は年明け早々にも議論を再開し、通常国会で来年度予算案の審議が終わり次第、党改憲案を国会に提出したい考えだ。
 議論を急ごうとしているのは、安倍首相が「スケジュールありきではない」と言いつつも、「2020年の改正憲法施行」という目標を提示しているからだろう。
 首相は5月、9条に自衛隊を明記する必要性を示し「20年を新憲法が施行される年にしたい」と表明。自民党が惨敗した7月の東京都議選後、改憲日程を巡る発言を封印した。10月の衆院選では党が公約に「自衛隊の明記」などを掲げたが、演説では改憲にほとんど触れずじまいだった。
 ところが、今月19日の講演で、「(東京)五輪が開催される20年、日本が大きく生まれ変わる年としたい。憲法について議論を深め、国のかたち、在り方を大いに論じるべきだ」と、改憲に再び意欲を見せた。
 自民党に望む。首相がギアを上げ直したからといって拙速に結論を導くべきでない。
 9条を巡る両論併記は、戦力不保持をうたった2項を巡る意見の隔たりに配慮した形だが、推進本部は首相案での集約を図るとみられる。
 2項を削除して「国防軍」を保持する案に対しては、連立を組む公明党は賛成せず、野党の同調も得られない可能性が高いためだ。
 裏を返せば、国会が発議の権限を持つ改憲が、レガシー(政治的遺産)づくりとも言われる首相日程に引きずられている格好だ。
 時事通信の世論調査(8~11日)によると、憲法改正の発議を通常国会で行うべきかどうかについて「反対」が68.4%に上り、「賛成」の20.9%を大きく上回った。
 自民党総務会は憲法改正をテーマにした自由討議を通常国会中に開催することを検討している。総務会は常設では党最高の意思決定機関であり、党改憲案を巡る議論を活性化させる狙いがある。
 首相官邸が与党より優位に立つ「政高党低」を改め、1強体質に封じ込められることなく、党内民主主義を基軸とした議論を展開してほしい。
 数の力で改憲を進めようとすれば、最も重要な改憲の必然性に関する熟議が抜け落ちることになる。