東日本大震災の被災地に寄せられる期待と果たすべき責務を改めて自覚させられる機会になったのではないか。
 仙台市で11月末に開かれた世界防災フォーラム(WBF)は、44カ国・地域から900人を超す参加者が集まり、初回としては想定以上の規模で発信の成果を残した。
 2015年3月の国連防災世界会議開催から2年8カ月、震災被災地が再び世界の関係者の連携の場になり、国連会議で採択された国際戦略「仙台防災枠組」の重みを確かめ合った意義は大きい。
 今後は連携するスイス・ダボス開催の国際災害・リスク会議(IDRC)と交互に隔年で定期開催されることが決まっており、被災地からの防災発信の機会が定着する。
 国連会議に続いて世界規模の防災会議を企画し、開催した手応えは財産になる。
 被災地全体として震災教訓に基づいた発信を継続し、国際語としての「BOSAI」、災害が起きる前の投資や啓発を重視する日本の防災の知見を世界に広める役割を積極的に担い続ける必要がある。
 WBFの議論では、30年までに災害による死亡率や経済損失などを大幅に減らす目標を明示した仙台防災枠組の重要性が随所で強調された。
 ロバート・グラッサー国連事務総長特別代表(防災担当)は「事前の備えに力点を置いたのが仙台枠組の最大の特徴だ。震災被災地の経験を共有することが大切。皆さんはグローバルリーダーになるべきだ」と呼び掛けた。
 「1ドルの投資が7~9ドル相当の復旧費用節減につながる」とも指摘される事前の備えの重みはある程度共有されてきたが、途上国では中央政府の計画を具体化する地方計画が未整備の状況という。民間投資も含めて末端まで「防災の主流化」が進む震災被災地の姿は、先導役の期待を持って熱く見つめられている。
 議論でもう一つ目立ったのは、担い手になる人づくりの視点だ。国際協力機構のセッションで前東松島市長の阿部秀保氏は、インドネシアやフィリピンの被災地と職員や市民の派遣交流を重ねている実績を紹介し、「未来を担う子どもたちも含めた交流は大きな財産であり、お互いに大切な投資になる」と語った。
 震災を機に始まった交流が途上国だけでなく地元の防災人材育成の基盤になるとの認識が広く共有されれば、被災地が目指すべき発信の方向性はさらに広がるだろう。
 国際的に気候変動による災害への対応が注視されている点にどう対応するか。原発事故など複合災害の視点をどう深めるか。世界規模の議論を足元の防災連携推進にどう生かしていくか。WBFに課された宿題は少なくない。
 開催を主導した東北大災害科学国際研究所を軸に運営体制をさらに強化し、次回2019年の開催に向けて連携の輪を広げていきたい。